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デザインの視点
デザイン戦略
2019年11月1日

「バーチャルとリアル」 ― DJマシュメロに見る「バーチャルとリアル」の融合 ―【トレンド読み解き】

トリニティのトレンド読み解きブログ
最近のヒット商品や、様々な領域を横断して見られるデザインの傾向から
時代の価値観や人々の消費マインドを考察する、「トレンド読み解きブログ」です。
時には深読みや肩入れもあるかもしれませんが、デザイン開発だけではなく、
商品企画やマーケティング、技術開発の発想支援(=TIPS)としても
楽しく読んでいただけると幸いです。
  

3月に幕張メッセで行われたDJマシュメロの来日公演に行ってきました。
マシュメロは、バッテンの目とニッコリとした口が付いたマシュマロ型の被り物をした
EDM(Electronic Dance Music)のアメリカ人DJで、
決して素顔を見せない弱冠26歳の謎多き覆面アーティストです。
昨年8月にリリースした英国のロックバンドBastilleとのコラボ曲「Happier」は、
8ヶ月以上経過してもなおBillboardの全米シングルチャートのトップ10内に
ランキングされており、音楽プロデューサーとしても目覚ましい活躍を見せています。
 


Happier 出典: Marshmello ft. Bastille – Happier (Performance Video)(Youtube)

来日公演では、EDMのライブにあるあるな、ジェットスモークによる白煙噴射や
フレームマシンによる火炎噴射、レーザーの激しい閃光などのド派手な演出に加え、
マシュメロをモチーフにしたコミカルな映像コンテンツも見応えがあり、
会場に集まったパリピの若者(マシュメロのコスプレイヤーも多数出現)が作り出す
フェスっぽい雰囲気も相まって、想像していた以上に楽しいDJショーでした。
何よりもまず、「そこに本物がいる!」ということにワクワクしました。
「バーチャルとリアル」 ― DJマシュメロに見る「バーチャルとリアル」の融合 ―【トレンド読み解き】
写真:幕張メッセでの来日公演の模様(筆者撮影)。
   レーザー閃光が激しくて、なかなかピントが合わず苦戦。

そのマシュメロは今年2月に、アメリカを中心に最近人気のバトルロワイヤルゲーム
Fortnite」の仮想空間を舞台にバーチャルライブを開催しました。
このバーチャルライブの開催時間は、わずか10分間であったのにも関わらず、
世界中から約1,000万人もの人たちが参加したそうです。
参加者は、ライブ直前に発売されたマシュメロのコスチュームで参戦したりと、
ゲーム中のキャラの姿を借りて、この仮想空間でのワンタイムイベントを共有したようです。

私はゲームをやらないので、残念ながらこの仮想ライブには参加しませんでしたが、
後日配信された動画を観て、マシュマロの動きやステージングの再現性の高さに感心しました。
さらには巨大化したマシュメロが飛び出してきたりと現実には有りえない演出もあり、
リアルタイムで参加した人たちはさぞかし楽しかっただろうな~と思いました。
と、同時に、マシュメロってリアルとバーチャルを自由に行き来できるんだ
そういうアーティストって、今までいなかったのではないか?とふと思いました。


バーチャルライブ 出典: Marshmello Holds First Ever Fortnite Concert Live at Pleasant Park(Youtube)

幕張のライブ会場では、小学生らしき観客も何人か見掛けました。
(小学生で海外のDJのライブに来るなんて今どきの子供たちは進んでいるなー)
イマジナリーフレンド(空想の友人~幼少期に現れる心理学、精神医学上の現象)とは
意味合いが全く違うのですが、彼らが舞台に目が釘付けになっている姿を見て、
彼らにとってマシュメロは、実際に存在し、マルチな才能を発揮する生身の人間でありながら、
空想の世界に棲むクリーチャーなのではないかと勝手に想像してしまいました。

デジタルツールに慣れ親しんだデジタルネイティブなオールドミレニアルズ(30代)、
SNSを使いこなすソーシャルネイティブなヤングミレニアルズ(20代)に次ぐ
ジェネレーションZ世代の今の10代は、仮想や空想の世界も現実生活の一部となる
「バーチャルネイティブ」
になるのかもしれません。

近年は、VR市場が活性化し、電子技術による触感の再現や、5Gの大容量高速通信による
視聴体験の向上など、技術革新によるリアリティの追求も加速しています。
VR版のお化け屋敷(?)「TYFFONIUM」や、住宅物件のVR内覧など、
仮想サービスの実用化も進んでいます。
また、現実空間に仮想空間を重ね合わせるMR(複合現実)用のヘッドマウントディスプレイ
HOLOLENS」を開発したMicrosoft社のテクニカルフェローAlex Kipman氏は、
MRデバイスの進化が空間の瞬間移動を可能にし、そこにいない人たちもそこにいる人たちと
同じ時空での体験を共有する未来を構想しています。
まさに、ドラえもんのどこでもドアが実現するということですね。
完全自動運転が実用化された暁には、クルマ自体がVR端末と化し、
移動中に別空間にワープするといったことも可能になるのかもしれません。

最近では、エシカル商品としての人工ダイヤモンドの人気に見られる「本物と偽物」に
対する人々の認識の変化や、ブランドの若年化を図る高級ブランドによる
「ラグジュアリーとストリートカルチャー」の融合など、これまで結び付くことのなかった
対極にある事柄の境目が曖昧になってきています。
それを踏まえると、現実空間と仮想空間も今後、メビウスの輪のように、
地続きになっていくのではないかと推測します。
 
仮想体験というとVRヘッドマウントディスプレイをイメージしてしまうので、
現時点ではその存在によって、現実空間と仮想空間が分断されている感がありますが、
リアルとバーチャルの融合は、既にそれが現実か仮想であるかということすら
意識されずに日々行われています。

AR機能を活用したポケモンGOやSNOWアプリをはじめ、大人気の体験型デジタルアートや
eスポーツ、そしてチコちゃんもまた然り…
現実空間で誰かと一緒にいながら、SNS上でそこにいない誰かや互いに知らない人同士で
やり取りすることも普通のことになっていますが、これもある種の仮想体験ですね。
そのうちに、映画館でも映画を客観的に観るだけではなく、自分がアバターになって
その世界に没入できるようになる日が来るかもしれません。
(既に、応援上映など、コンテンツと観客の距離は縮まりつつありますし…)

 
リアルライブでの実物のマシュメロと、バーチャルライブでのCGのマシュメロを
同一視している(?)と推測する、幕張の会場で見掛けたあのキッズたちが消費の担い手になる
将来には、アバターに着替えて仮想空間で友達と待ち合わせ… なんてことも
当たり前のことになるのかもしれないです。
その頃には、フィジカルな空間も今とは全く違う様相になっているのでしょう。
ネットの普及が、近年、店舗などの空間を体験の場として再定義しつつあるように。

– 
余談
マシュメロの来日公演はオールスタンディングでしたが、会場には車椅子の方も
安心して観られる、視界も良好な、小高い専用スペースが設けられていました。
最近のライブ会場は、とても親切だと思いました。

T/——————————————————-
文責:篠崎美絵
トリニティ株式会社 執行役員 / デザインコンサルタント・クリエイティブ・ディレクター

インテリアデザイン事務所でファッションブランドのブティックをはじめとする
商業空間の内装設計に従事。
ミラノ工科大学にてデザイン戦略のマスターコースを取得後、2003年にトリニティに入社。
デザイン、カルチャー、ライフスタイルの観点から消費者価値観や市場の潜在ニーズを洞察し、
具体的な商品/デザイン開発のアイデア創出のためのコンセプトシナリオ策定、及び
トレンド分析を行うデザインコンサルティング業務を担当。

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