トリニティ株式会社

福井県/政策立案にむけた「デザイン思考」研修を、連続開催

公開:2020年7月31日 更新:2020年7月31日

政策イノベーションに、なぜデザイン思考?

近年、公共セクターにおいても、デザイン思考を政策形成に取り込む動きが加速され始めました。

かつて政策構想は、参照すべき先進事例モデルに学び、それに組織や地域・対象の状況に対応すべく微修正を加えれば良かったのですが、今日ではそのような「モデル」が見出しづらくなっています。

 

変化が激しく、あいまいで複雑なVUCAの時代と言われ、重ねてAfter/Withコロナ、 COVID-19禍の中では一層のこと、解決するべき課題も複雑・多様化しており難しくなるばかり。課題の認識そのものが過去の延長線上のまま、形式・形骸化されていることも少なくありません。

 

そんな中で行政セクターでは既に民間で実績が出始めた「デザイン思考」に注目し、そこから次の時代にふさわしい行政イノベーションを模索しているといえます。

福井県では恐竜博物館も有しており、考古学としての貴重な地域。

福井駅に降り立つと、何体もの恐竜が迎えてくれる。

私たちは先週、昨年に続き、福井県の職員や市町村の職員の方にむけて、デザイン思考の基礎セミナー&ワークショップ研修を実施してまいりました。

 

未来戦略課メンバーを筆頭に、市町共同課、県民活躍課、新幹線開業課、文化課等多くの課や専門個別組織から総勢34名。

ほとんどの参加者が人や生活者中心の政策や公務を推進したいという意識と意欲の高い面々。

ですがデザイン思考に触れるのは、まったく初めてという方々でした。

会場となった研修センターは、小学校を改装して教育の歴史について学べる場所として開放されてもいる。昔の教室のジオラマも展示されている。

トリニティによる、公共セクター向け「デザイン思考」は?

初日は、座学の講座とワークショップ。

いかに生活者の視点に立つか、共感とは何か、インサイト(本音や潜在欲求)とは何かを、数々のオリジナルワークシートを活用して、全員が体感していきます。

「エスノグラフィ調査」、「カスタマージャーニー」、「共感マップ」なども駆使し、本音や言葉になっていない期待値を引き出します。

また、アイディアが出ない時に活用できる、アイディア発想の強制メソッドも紹介し、個人の知恵だけでなく、参加者全員の知見やアイディアを織り重ねながら「チームで考える、チーム脳」も育てます。

何より大切なのは、受け身で学ぶのではなく自ら考える、そしてチームと対話(ダイアログ)する姿勢。2日目の後半は、これからの福井の未来を自分はどうしたいか、どのように創っていくか、そのために浮上するテーマ(課題)は何か、を丁寧に対話しました。

こうすることで、本当の「問い」を発見し、ふくいの未来をどうしていきたいかを考える第一歩を踏み出しました。

福井県の今

3年後に迫る北陸新幹線敦賀開通を目前に、福井県の杉本知事は政策のアプローチに、従来の課題解決型ではなく、新しい福井独自の価値を生みだすため、発言し、いわば(広義の)デザインアプローチを推奨しています。

過去の延長であるルーティンやしがらみから離れ、生活者視点で考えよう、職員全員が現場に行って考えようということがこれからの発想です。

具体的にそれを推進するのは、未来戦略課。藤丸副部長もオープニングの挨拶で、これまで頑張って成果を出してきた産業にデザインを取り込む民間支援に重ねて、今後は政策に広い意味でのデザインの持つ力を活用して政策デザインを実現し、文化とデザインの力で福井をパワーアップしていこうと熱く語っています。

福井県は全国の自治体の中で、日本発のデザイン行政を実践した県とも云えます。1990年代には、イタリアのデザイン大学院であるドムスアカデミーと提携し、世界のトップデザイナーであるアンドレア・ブランツィ氏やアレッサンドロ・メンディーニ氏等から、広義のデザインの主旨や重要性をいち早く学び、産業デザインに落とし込んできました。これからは杉本知事の元、これを政策デザインに飛躍させようとしています。

公共セクターが悩む「デザイン思考」の壁を越えていく

このような政策イノベーションが求められると同時に、そこには困難な問題が待ち受けています。

デザイン思考を導入するだけでも、

 

・ 県民の本音がなかなか聞き出せない

・ 前例がないので、デザイン思考の成果が組織の中で共有できない

 ・デザイン思考の成果は、一つの結果=正解や効果が曖昧で、評価が難しい

 (経済評価?移住人員?組織内のモチベーション?制度改革?成果者の声?一体何がKPI?数値化されるの?)

・ 行政は年度予算で進むので(トライ&エラーを繰り返すことで)精度を上げるデザイン思考は予算に組み込みづらい

 ・組織の中に、意欲とスキルがある「デザインシンカー(デザイン思考を推進する人)」がいないと継続できない。

 ・依然、組織の壁が厚い

 

などなど沢山の困難さが出てきます。

私たちが、最初にワークショップでお伝えするのは「まず、ご自身が職務の視点だけでなく、生活者の視点で考える癖をつけてください」ということ。それよって「自分どうしたいのか」を内省。自分が未来に向かって「どうしたいのか」という自分軸がないままに、これらの困難と対峙しても何も進まないでしょう。

慶応義塾大学特別招聘准教授の井上英之氏のハーバードビジネスレビューの記事(2019年2月)(http://www.dhbr.net/articles/-/5677)にもあるように、自分と仕事と世の中(社会)がひとつながりになっていることが、今後とても大切になるといいます。自分が何をしたいか、それを目の間の仕事とどう関連づけていくか、その仕事を通してどう社会と向き合うのか、これが統合されている状態で個人やチームは最大の力を発揮しイノベーションが生まれます。

職務だからではなく、自分は未来をどうしたいか、を軸として考え始めるとそこに共感が生まれ、仲間ができ、政策に落としていく道筋ができてくるでしょう。

キャプション:「私」と「仕事」と「世の中」の相関図 出典:コレクティブ・インパクト実践論

https://www.dhbr.net/articles/-/5677

市場の需要と供給のバランスが崩れている現在は、需要側(生活者、使う側)に共感されないと何も動きません。政策も同じです。県民や市民をひとつのパターンで見るのではなく、一人ひとりを診て(観て)生活者と共に一緒に考えていくプロセスであるデザイン思考の手法は、新たな未来を政策に落とすための組織活性と政策イノベーション、何より個人の行動変容を引き出す鍵となり得るのです。

この2日間の参加者の皆さんとのワークを通じて、変化の兆しを感じとりました。

参加者の声

福井県農林水産部副部長(福井米戦略)松本伸江さん

 

今のプランを一旦壊してみることで、新たなアイデアが浮かんだり、別のアプローチが現れたりすることを研修中にリアルに体験した。デザイン思考をするには、こういった「メソッド」を使うこと、自分だけでなく他人の頭も使って「チーム脳」で考えることが有効であると学んだ。

新型感染症ウィルスの登場の例に見られるように、過去の延長線上で未来を描いてもあまり意味はなくなり、価値観も大きく変わりつつある。人々の内なる希望を具現化し、新たな価値や幸福を生み出すデザイン思考を今後の政策立案に積極的に取り入れていきたいと思う。

 

大野市教育委員会 生涯学習課 主査 大黒理恵さん

“政策デザイン”とはどういう意味だろう?と半信半疑で受講だったが、「対象の行動観察」からの「インサイトの獲得」など、初めてのワークの連続だった。

特に「破壊ブレスト」で他チームから企画のダメ出しを受けた後には、改善を図るためにさらに新たなアイデアが生まれた。

最後は福井の「望ましい未来」を設定し、それを叶えるための「問い」を立てた。ここまでが今回の研修。最後のテーマが自分の業務と一致していたため、問いに対するアクション=政策について、自分の本来の業務に戻って考え抜きたい。

 

福井県工業技術センター 建設技術研究部 研究員  前田 健児さん

福井は幸福度№1と言われているが(この結果が導き出された調査では)福井県民に対して「聞く」ことはしていないと思われる。楽しいや怖いは外見から判断しやすいが、幸せは外見では判断が難しい。その人にとっての「幸せとは何か」を聴き、深堀することで「県民が思う本当の幸せ」が見えるような気がした。今後も「本当の幸せ」から未来を描き、未来と現状の差を満たすアクションを起こしていきたいと思う。

 

福井県地域戦略部未来戦略課 企画主査 小西富美子さん

「手渡した時に『あ、こういうもの、実はほしかったんだ!』と言わせるのが最高のプレゼント。」研修の中でこの言葉を聞いて、デザイン思考をぐっと身近に感じました。公務員の仕事は、できるだけ多くの人にとってプラスになる施策を立案しようとして、結局誰ににとっても“しっくりこない”ものが出来上がってしまいがち。徹底的に相手に寄り添うことを重視するデザイン思考を活かしたら、どんな施策のアイデアが出てくるかワクワクしました。

資料案内

初めての方向けデザイン思考導入プログラムのうち、研究開発・知財・新規事業分野の方向けの詳細資料をご用意しています。

こちらの資料請求フォームからぜひダウンロードください。

簡易なアンケートにお答えの上、PDF資料をすぐに入手いただけます。

文責

湯浅保有美

トリニティ株式会社 CEO 代表取締役社長

エイチタス株式会社 取締役 / デザインプロデューサー

ソーシャルケア デザイン

– ソーシャルプロデューサー

– グラフィックファシリテーター

– LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ

RobiZy 正会員(特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構)

一般社団法人日本知財学会 正会員

Stories

関連記事