世界最大規模の最新エレクトロニクス見本市「CES 2025」が1月5日のプレスデーを皮切りに、10日まで開催されました。弊社ではここ10年、CESを定点観測しており、テクノロジートレンドの推移を注視しています。
CES2025の概況
今年は過去最高の4,500社以上が出展し、来場者数も昨年を上回る14万1,000人以上が世界中から集まりました。メイン会場であるLVCC(Las Vegas Convention Center)は、2年前に新設されたWestホールからNorthホール、Centralホール、そして昨年工事中で使われていなかったSouthホールまで全てが使用されていました。
LVCCと並ぶ多くの出展があるVenetian会場は、1階全体に世界のスタートアップ企業が1,400社以上。その中で圧倒的な存在感を示したのは韓国のスタートアップ企業たちでした。ただしスタートアップ界隈ではプレゼンスがかなり高い韓国ですが、LG、Samsungといった大手韓国企業に関しては、存在感はそれほど強くありませんでした。展示内容は昨年と同じか、ダウングレードしたように感じられました。
Venetianの上階には、HealthcareやSmart Home関連などの出展があり、LVCC Northホールと共にHealthcare領域の延長としてMedTech関連の出展で賑わっていたのが今年注目した傾向の一つです。
また、CESのもう一つの注目コンテンツである多くのカンファレンスですが、今年はPress Dayのカンファレンス数自体は若干減りましたが、連日行われたKeynoteはどれも盛況で、有意義な内容が多かった印象です。
今年は初めての試みとしてラスベガスに一昨年できた球体型複合アリーナ「Sphere」で、航空会社のデルタ航空がKeynoteを行いました。270°の高解像度スクリーンを使った飛行体験映像を交えるKeynoteは、これまでとは趣の異なるカンファレンスであり、働く人やユーザーを中心に据えながら、それらの体験をリッチにする企業姿勢が貫かれており、テクノロジーありきではない企業の姿勢の打ち出しはとても好感の持てる内容でした。
展示会としてのCESのあり方
今年目立ったのは、カンファレンスやKeynoteだけに登壇し、展示会場にはブースを持たない企業が増えたことです。CESのテーマはAIやメタバース、サステナブルなどに注目が集まっていますが、プロダクトに完全に落とし込めていないことがその要因ではないでしょうか。
5~6年前は、IoTの文脈であらゆるモノがネットワークに繋がり便利になる世界の中で、自動運転という車に落とし込まれた未来を多くの自動車メーカーが示して、CESでのプレゼンスを上げていましたが、昨今のAIを活用した未来において、私たちの生活を劇的に変えるプロダクトはまだ描かれていません。
家電製品にしろ、モビリティやロボティクスにしろ、AIが搭載されパーソナライズやコミュニケーションの質が向上すると言っても、そのモノが生活シーンに不可欠である必然性を感じられないのが、黎明期の現状だと感じます。しかしながら、それが現実の(リアルな)環境で当たり前に存在する世界の到来は間近に迫っていることを、多くのカンファレンスを通じて感じました。
注目のトレンド:AIと生活の融合が示す未来像
昨年に引き続き、今年も話題の中心はAIでした。様々なデータを連携しながら、生活者にパーソナライズされた体験や最適化された環境を提供することが提示されました。
昨年との違いや進歩は、今回のCESのテーマでもある「DIVE IN」。各々のAI搭載の製品やサービスが繋がり、連携しながら新しい価値を実現するという部分。垣根を越えて繋がりながら生活者にどのようなベネフィットや新しい環境を提供できるかを言及した点だと思います。
そうした未来を示してくれたのは、NVIDIAのKeynoteです。ジェンスン・ファンCEOの基調講演は通常会場より5~6倍収容可能なアリーナ会場で行われ、それでも溢れるほどの盛況ぶりでした。終始AIを活用して、NVIDIAのチップセットや画像認識、ロボティクス技術が日常生活を快適に機能させる未来を見せてくれました。
人型ロボットが人間と共生し、生活の中で当たり前にある暮らしは、そう遠い未来ではなさそうです。
一方、話を聞きながら少し怖いと思ったのは、一私企業が世界中のモノや生活空間に技術として入り込むことでの寡占。それによる偏ったアルゴリズムによる、知らずのうちの扇動。やはりここでも倫理観や法規制の議論を早急に進める必要を感じました。
AI搭載のXRグラスも実用化に向け進展していました。AppleのAirPods Pro2が米FDA(食品医薬品局)に補聴器機能の承認を得たこともあり、Hearableデバイスが注目されていますが、CESのAgeTechエリアに出展していたXander社の高齢者向けグラスは、目の前にいる相手が話している内容をリアルタイムで字幕表示する機能を備えるデバイスでした。
他にも、AIによる翻訳機能搭載のスマートグラスや、指向性マイクが音声を拾い、眼鏡のつるに内蔵したスピーカーで聞き取りやすくするデバイスなどが展示されていました。医療分野にも近いヘルスケア領域でのAIを活用したソリューションは、今年のCESで注目のトレンドでした。
注目のトレンド:持続可能な未来、エネルギー技術への挑戦
AIが全ての機器に搭載されることで課題となるのが、エネルギー消費の問題です。CESでは既存インフラに依存しないエネルギーやバッテリー、あるいは再生可能エネルギーなど新たなエネルギーシステムの提案も注目を集めていました。
ENEOSは、「Direct MCH®」という水素輸送・貯蔵技術で、水素を液体化し、安全かつ効率的に扱える環境を提供する展示や、CO2を回収し貯留する技術、貯留したCO2を再利用する脱炭素社会を実現する取り組みを展示していました。
Flint Paper Batteryは、紙をバッテリー化する技術を展示していました。軽量でフレキシブルに使える様々な可能性を感じさせるバッテリーです。さらにバッテリーでありながら、最後は土に還るという環境に優しいエネルギー貯蔵ソリューションを提案していました。
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