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デザインの視点
デザイン戦略
2019年8月20日

日本の組織が「デザイン思考で成果を出す」ためのヒント

日本の組織が「デザイン思考で成果を出す」ためのヒント
皆様は既にご存じの通り、デザイン思考は、ビジネスの課題解決や社会をより良くするために
デザインワークの考え方とプロセスを活用するイノベーションメソッドのひとつです。
VUCA(*)の時代にあって、モノや情報が飽和した私たちの未来を幸せにする商品やサービスや
社会の仕組みは、従来のような顕在化されているニーズの後追いでは、叶えられません。
生活者、ユーザの一人ひとりに寄り添い、言葉にならないモヤモヤや期待値やインサイト、そして
無意識の行動から「次の何か」を生み出すには、従来PDCAサイクルを回すだけでは限界があります。

そこで、生活者やユーザの非言語メッセージ、無意識の行動からインサイトを読み込んで
多数のアイディアを出す。そしてそれを素早く見える化して(プロトタイピング)、
再びユーザの意見を入れながら最適なアウトプットを「創りながら考える」~という
開発プロセス「デザイン思考」が注目されています。

■メソッドをそのまま導入しても成功しない理由
 
ところが最近、弊社の周辺でも「デザイン思考ワークショップをやったけれど、
イノベーティブな製品&サービス、ビジネスモデルはできなかった」という声が
複数聞こえてきます。
なぜでしょうか?
 
数多くのWSを実践している私たちの経験値でいうと、次のことが挙げられると思います。
 
 
1)「組織内でチームを組んでも多様性がない」
 
よく言われるように、アメリカでもそれ以外の国でも、言語や宗教や考え方の多様性は、
日本の比ではありません。デザイン思考では多様性のあるメンバーが集まり、
その異なる視点や専門性でのセッションが基本です。
日本では、教育や組織においても、同質の価値観や暗黙知が育つ環境であるため、
組織の内部チームだけでは多様性のあるチームが編成できないことが多々あります。
 
 
2)「同様に、多様な専門スキルをもったチームを組みづらい」
 
デザイン思考を導入する際に、組織の中では予算や権限が縦割りになっているため、
部門を超えてチームを創りづらい環境です。
加えて、日本は組織を構成する一人ひとりのリテラシーが高いこととうらはらに、
専門性が高い社員の数には限りがあります。
 
何らかの専門性があっても年齢とともに、管理職となりジェネラリストをなっていきます。
そのような立場になると、デカルト以降の「客観性」やエビデンスが大切になり、
主観や感覚、感性を使う機会も減り、能力も均質化されていきます。
 
そもそもデザイン思考をメソッド化したアメリカの環境では、
専門性が高すぎて他が見えない、実際の生活者が見えない~状況もあり
それを打破するメソッドとして、デザイン思考が叫ばれた背景があると思われます。
日本の組織では、専門分野のスキルを持った多様性ある環境創りも
難しいといえましょう。
 
 
3)「生活者として&体感して考えるトレーニングができていない」
 
20世紀後半からつい最近まで、いかに効率よく合理的に業務を処理するか、と
頑張ってきた日本の組織。
90年代後半から言葉として出始めた「知的生産性」もまた
インテリジェンスがどう「生産性を高めるか」~に重きが置かれていました。
手元には、膨大なサイト上からの二次情報。
 
日々のワークに忙殺され、二次情報をどう自分で捉えるか~の熟考はもとより、
そもそも2次情報をリアリティをもって感じることも出来ません。
「生産性を高めよ」の呪縛から逃れられずに、
B2B2Cのプロセスでユーザー視点で体験して考えるという筋トレが出来ていないのです。
そこに急にメソッドを導入しても、ざっとプロセスをなぞって終わりになり、
メソッドを学ぶことで、プロジェクトの時間切れとなってしまうのです。
 
 
■トリニティの試行錯誤は?
 
私たちは、これらの課題を目の前でみているので、
毎回のプロジェクトでは次のことに気を付けています。

1)「有識者ネットワーク」の活用
 
価値観や専門性を担保するために、可能な限りのユニークな有識者を
プロジェクトの中に入れ込みます。
従来は、教育機関の専門家(大学教授や関連機関の代表等)をアポイントしていましたが
現在は、それぞれのテーマに対して、「現場」と「グローバル市場」を知るプラクティターを
起用することが増えました。加えて、自分の専門領域が二つ以上ある有識者などもあえて投入します。
そうすることで、モノの考え方、読み取り方が大きく広がり、ワークメンバーの視野も広がります。

2)トリニティの「トレンド情報」の活用
 
私たちは、国内外の未来トレンドを「価値観・デザイン・技術の視点」
で毎年レポートしています。
このレポートは、トリニティの国内と提携する海外のデザインリサーチャー複数
により編集されており、世界の今を読み解きながら未来はこうなるかもしれない~という実例を
挙げており、今年で20年のクロニクルがあります。
 
ワークショップではこれをテーマに合わせて再編集して、ワークショップの冒頭に
参加メンバーへのエッセンス提供(調査でいう「刺激物」)として活用します。
自分ではなかなか手に入らない、この時系列でまとめられた情報により、
参加者はより高い視線と「グローバルな中でのローカル」に
意識を傾け、ワークに入ることが出来ます。
 
 
3)「デザインリサーチ」肝である、スキルの伝授
 
デザイン思考のメソッドで、最初に必要となるのが、
生活者の視点で行動観察、フィールドワークをするというプロセスです。
トリニティでは、従来から受託業務として、100本近い
国内外のエスノグラフィを重ねてきました。
 
トリニティでのワークショップの中では、
このエスノグラファが参加者と一緒になって動くことが出来ます。
一緒にカスタマージャーニーを描いたり、行動観察から何を読み取るか、を深くディスカッションしていきます。
そうすることで参加者ひとり一人の中に、限られた時間の中でエスノグラファー的な
体質が出来てくるのです。

またクライアントの中には、「デザイン思考を導入する機会に「人材開発」をもやりたい」
という課題がある場合もあります。
その場合のトリニティでは、「次世代リーダー」をどう組織の中で作り上げるか、
を中心にプログラムを組み、
必要であれば、「グラフィックファシリテーション」や「レゴアスプレイ(TM)」などの
「ひとを定性的にとらえて、エンパワーできるメソッド」をなども加え
その成果を引き出します。

トリニティでは、デザイン思考というメソッドを教えるのではなく、
それを日本の組織の中で活用できる場とプログラムの設計、
そして、ワークの時の「伴走」にエネルギーを傾けるようにしています。
 
 
■なぜ、トリニティがデザイン思考をやるのか、その系譜
 
弊社のデザイン思考の系譜をたどると、そこには弊社の創業当時の
ドムスアカデミーとの協働に、その礎があります。
ドムスアカデミーは、ミラノに在するデザイン大学院で、当時の創業メンバーは
70年代、80年代と時代を切り開いてきた欧州のデザイナー達。
当時のデザイナーは欧州の教育システムに習いほとんどが建築家。
創業メンバーのソットサス、マリオベリーニ、アンドレア・ブランツィ等々
今でいう工業デザイン、グラフィックデザイン、ブランディング、コミュニケーションデザインなどを
建築家という職種がこれを担っており、建築家は建物を作る人ではなく、
未来を創る、ビジョンを作る、社会をつくる立ち位置でした。

 
ドムスアカデミーの創業者、教授陣たちとの協業の中で、
デザインとは、生活者と企業と世の中或いは過去と今とそして未来をつなぎ
その概念をカタチにする仕事なのだと体感していました。
彼らは、机上で考えるのではなく、まさにその場のフィールドワークを重ね、
人と語らい、歴史に紐解き、そして来るべき未来を提言していました。
デザイン思考もまさに、彼らが日々実践していたワークプロセスだったのです。
 
トリニティでは、その私たちのDNAから、
デザイン思考は特別なものと考えてはおりません。
 
ですが、それを皆で動かして成果を上げるとき、どんな組織環境でやるか、には
大きな差異があると認識しています。
欧州の事情(当時欧州では、企業は中小企業&オーナー企業が多かった)、
そしてアメリカのデザイン思考がメソッド化された時期の状況、
そして私たちのクライアントである日本の大きな組織が、デザイン思考を活用して成果を出すとき、
同じメソッドでも、活用の方法や落とし込みには配慮しなければなりません。
 
私たちも未だ、正解をつかんではおりませんが、
これまでの試行錯誤とデザイン思考というメソッドの素晴らしさを引き出しながら、
奔走する日々です。

T/——————————————————-
文責:湯浅保有美
トリニティ株式会社 CEO 代表取締役社長
エイチタス株式会社 取締役 / デザインプロデューサー
ソーシャルケア デザイン ソーシャルプロデューサー / グラフィックファシリテーター
RobiZy 正会員(特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構)
LEGO® SERIOUS PLAY® 終了認定ファシリテータ

組織の経営と生活者のインサイトを
デザインで繋ぐため(三位一体=トリニティ)奮闘中。
昨今は、次世代リーダーのクリエイティブ人材を育てるための
人材開発プログラムに日々のエネルギーを注いでいる。

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