会議や打ち合わせで「ちゃんと説明したはずなのに、伝わっていない」と感じたことはありませんか。
それは、アイデアではなくひょっとしたら「言語化」の問題かもしれません。
考察ブームで浸透した「言語化」という行為
「言語化」という言葉。
個人的には、流行語大賞にノミネートされてもおかしくないのでは、と思うほど、あらゆる場面で耳にするようになりました。
みなさんもご存じの通り、言語化とは、思考やその結果を言葉として表現する行為のことです。
多くの場合、他者に自分の考えを伝えることを目的として行われます。
この行為自体は昔から存在していましたが、「言語化」という名前がここまで定着した背景には、近年の考察ブームの影響が大きいでしょう。ビジネスの文脈においても、アイデアの「価値」を伝えるために欠かせない行為です。さらに近年は「共創」の機会が増え、意見交換や議論の場面で、より一層言語化能力が問われるようになりました。
但し、流行りの言葉を並べて尤もらしく語るだけでは、それは借り物の言葉にすぎません。
では、言語化に長けている人とは、どのような人なのでしょうか。
それは、自分の頭の中にあることを、まるで優秀な同時通訳者のように、即座に言葉としてアウトプットできる人ではないかと考えます。
さらに言えば、それを相手が理解できる形で説明できることも重要です。
もちろん、語彙力や経験値(場数)は欠かせません。
そして、このAI時代においては何よりも
「熱量をもって、自分の言葉で語ること」
が前提になるのではないでしょうか。
自分の言葉でダイレクトに伝える意義
パソコンやスマホで文字を打つことが当たり前になり、いざという時に漢字が書けなくなる——そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。同じように、AIが言語化を肩代わりしてくれる環境に慣れすぎると、自分自身で言葉を組み立てる力が衰えてしまう可能性があります。
生成AIの進歩は目覚ましく、日々その性能に驚かされます。
正直に言えば、わたしのような凡人レベルでは到底太刀打ちできないほど、流暢で整った言語化をしてくるようになりました。便利さを享受する一方で、焦りを感じるのも事実です。
ただ、意表を突くような独自の表現や、体温を感じる言葉には、まだ人間の余地が残されているとも感じています。
そうした実感から、「自分の言葉で伝えること」には、これからも大きな意義があるのではないかと考えます。
言語化能力を高めるレッスン法
では、自分の考えを「自分の言葉」で伝えられるようになるには、どうすればよいのでしょうか。
日頃の心がけやトレーニングのヒントになりそうな事例を、いくつかご紹介したいと思います。
① 認知バイアスを取り除く、フッサールの「現象学」
20世紀初頭の哲学者エトムント・フッサールが提唱した「現象学」をご存じでしょうか。
これは、先入観や前提(自然的態度)をいったん脇に置き(エポケー=判断停止)、主観的な意識を起点に物事を捉え直すという考え方です。哲学的で難解な概念ではありますが、「認知バイアス=思い込み」に囚われずに物事を観察する方法として捉えると、言語化以前の “思考の質” を高めるヒントにもなりそうです。
そこで、わたし自身も理解を深めたく、生成AIに「小学生でもわかるように」解説してもらいました。
フッサールの現象学は、ちょっと難しそうな名前だけど、簡単に言うと「物事をまっさらな目で見て、それがどういうものなのかをじっくり考える方法」のことなんだ。
◆ 例え話で考えてみよう
例えば、目の前にリンゴがあるとしよう。
私たちは普段、「これはリンゴだな」「食べたら甘いかな」「おやつに食べよう」みたいに、色々なことを知っているから、パッと見ただけで色々なことを考えてしまうよね。
でも、フッサールは「ちょっと待って!」って言うんだ。
彼は、私たちが知っていること(リンゴは甘い、とか、おやつになる、とか)をいったん全部横に置いて、まるで「初めて地球に来た宇宙人」になったみたいに、このリンゴを観察してみよう、と考えるんだ。
Geminiの回答より
初めて地球に来た宇宙人がリンゴを見たら、「赤い、丸い、ツルツルしているな」「鼻を近づけたら、何か匂いがするぞ」と、見たまま感じたままに感想を言うでしょう。このように、現象をそのまま捉える姿勢が、現象学の考え方です。
私たちは無意識のうちに外部情報を鵜吞みにして話しがちですが、それではAIとの壁打ちの方が、速く・上手に言語化できてしまいます。「まっさらな目で見て、それをそのまま言葉にする」ことは、言語化だけでなく、発想そのものの創造性も高めてくれるのではないでしょうか。
② 要点を絞って簡潔に表す「一行レシピ」
2000年代終盤に、SNSをきっかけに流行した「一行レシピ」。
文字通り、一行で工程を説明するレシピですが、調べてみると今もなお健在のようです。
出典:https://www.amazon.co.jp/みんなのガチ旨ッ-一行レシピ。-晋遊舎ムック/dp/4883806723
一行で全工程を伝えるため、レシピは必然的に「シンプルで再現しやすいもの」になります。要点を絞り、簡潔に表現する——このルールは、ビジネスにもそのまま応用できます。なぜなら、相手にとって理解しやすいだけでなく、伝える本人の思考整理にもつながるからです。
パワーポイントの資料が文字で埋め尽くされてしまった時。そんな場面で、この「一行レシピ」を思い出してみると良いかもしれません。
私自身、面白いと感じたデザイン事例を一行で表してSNSに投稿することを試したことがありますが、これがなかなか難しかったです。
それでも、頭の体操として非常に良い言語化トレーニングになりました。
③ 視点を相手に置き換える「まるでこたつソックス」
靴下メーカー・岡本の大ヒット商品「靴下サプリ まるでこたつソックス」。
元々の商品名は「三陰交をあたためるソックス」でした。
三陰交をあたためる~は、機能や効能を示す企業視点のネーミング。
一方、まるでこたつ~は、使った時の感覚を表すユーザー視点の言葉です。
この視点の転換も、言語化スキルを高める上で大きなヒントになります。
日本語にありがちな「主語のない」表現や、社内・業界内でしか通じない専門用語。無自覚のうちに相手を置き去りにしてしまう言葉遣いを見直すきっかけにもなるでしょう。
デザイン思考がユーザー視点を重視するように、言語化においても「相手の立場に立つこと」は欠かせません。どれほど熱意を込めた言葉でも、自分にしかわからない表現では、伝える意味がなくなってしまいます。
トリニティの言語化スキルアップ支援
いかがでしたでしょうか。日常の中で無理なく取り組める言語化レッスンとして、少しでも参考になれば幸いです。
AI時代の言語化とは、正解をうまく言い換えることではなく、まっさらな目で見た世界を、自分の言葉で翻訳することなのかもしれません。
私たちトリニティ株式会社では、商品・事業開発の支援と同時に、アイデアやその価値をユーザーや社内に効果的に伝えるための「言語化」のスキルアップにも注力しています。
フレームワークや曼荼羅マップの作成などを通じて、業界外・社外の “まっさらな目” で言語化をサポート。ワークショップには、言語化に長けたライター/コピーライターも参加し、専門的なアドバイスを行っています。
・良いアイデアがあるのに、言葉にできない
・仲間内では伝わるが、他部署や社外には伝わらない
・商品・事業の価値を言語化することに苦戦している
そんな課題をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
文:トリニティ株式会社・篠﨑美絵
この記事をお読みになりご関心をお持ちの方へ。
AIが高度に言語化を担う時代においては、情報を整えるだけでなく、「自分の言葉で、相手に伝わる形に翻訳する力」がこれまで以上に重要になります。
トリニティでは、商品・事業開発の現場において、多様な視点や対話を通じて思考を深め、アイデアや価値を的確に言語化する取り組みを行っています。
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