トリニティの空間・住設デザインコンサルティング
トリニティでは、価値観とライフスタイル&デザインの定点トレンド調査(クロスオーバー・トレンドレポート、テックトレンドレポート)に立脚し、さまざまな空間・住設トレンド調査やプロジェクト支援プログラムを実施しています。新たなビジネスのためのトレンド・市場調査から、アイディア創出のための調査、検証のための調査まで、すべての段階でグローバルに、そしてクリエイティブに実施します。
空間・住設・オフィスのデザインコンサルティング事例
このシリーズでは、みなさまの「どんなことが頼めるの?」という声を受け、長年にわたりトレンドのコンサルティングを事業会社に届けてきた弊社のシニアリサーチャーの「読み解き」例を掲載しています。
2020年から猛威を振るった新型コロナの影響は、暮らしや働き方など、ひとの日常や様々な活動変化をもたらしました。そしてその影響は短期に留まらないことが予想され、長期的な資材である「空間」もこういった変化に応えていく必要が出てきています。
このシリーズでは、ニューノーマルな生活への変化と、この数年単位での特徴的な空間デザイン事例を重ね合わせ、今後起こりうる空間デザインのトレンドを先読みして解説します。
第1回は「New Normal」の概念を歴史的に紐解き、「ひと」の日常が変化することで変わってきた空間デザインの大きな潮流を読み解きます。(第1回 / 全3回)
目次
・ウィズコロナ生活で再考される空間のあり方
・過去からの変遷の流れにある「New Normal」
・ネット社会は、あらゆるものの境目を曖昧に それに伴い空間は、「コト」の掛け算や引き算で進化
・持続可能な社会への変革によって空間にも求められる「柔軟性や持続性、多様性の受容」
ウィズコロナ生活の長期化は、様々な生活ニーズを新たに浮上させ、それに呼応する新しい視点による製品やサービスの開発を促しています。空間設計に与える影響も大きく、テレワークの強制導入により多様な働き方を受容する態勢が整い始め、住まいや職場のあり方も見直されるようになりました。商業空間においても然り、外出自粛が結果として、DXやオムニチャネル化を加速させるきっかけになりつつあります。
ウィズコロナ生活で再考される空間のあり方
ウィズコロナ生活の長期化は、様々な生活ニーズを新たに浮上させ、それに呼応する新しい視点による製品やサービスの開発を促しています。空間設計に与える影響も大きく、テレワークの強制導入により多様な働き方を受容する態勢が整い始め、住まいや職場のあり方も見直されるようになりました。商業空間においても然り、外出自粛が結果として、DXやオムニチャネル化を加速させるきっかけになりつつあります。
過去からの変遷の流れにある「New Normal」
パンデミックの事実が世界中の人々に実感された頃から、「New Normal」という言葉がよく聞かれるようになりました。New Normalは、新しい日常、新しい生活様式などと訳されていますが、社会的に大きな変化が起こることで新たな常識が定着することを指し、「新常態」とも呼ばれるようです。新型コロナウィルスの感染拡大による今回の社会変化だけではなく、1995年のWindows 95の発売を機に「インターネットが普及」したことや、2008年のリーマンショックの影響下、「持続可能な社会への変革」が起きたことなどもNew Normalに当たり、今回のことで、私たちはこの30年の間に3度それを体験するということになります。(New Normalは、経済学者のモハメド・エラリアン氏が2009年に提唱した概念だそうです。)よくトレンドは12年周期と言われたりしますが、本当にそうなのかもしれません。
今、私たちが直面しているNew Normalとは一体どういうことなのか、その答えはまだわかりません。ですが、1990年代のインターネット化、2000年代の持続可能化と、変化の流れはリニアで繋がっているのではないかと思ったりします。ウィズコロナ生活が続いていることもあり、人々や企業の関心が、衛生管理やリモートコミュニケーションに集約されている感がありますが、過去からの変革の流れと捉えると、新たに見えてくるものがあるのかもしれません。近年、経験してきたNew Normalの流れを受け、その変化の矢印がどのような方向に向かっていくのか、物理的な空間設計の観点から考えてみたいと思います。
ネット社会は、あらゆるものの境目を曖昧に
それに伴い空間は、「コト」の掛け算や引き算で進化
インターネットの普及やSNSの日常化は、人々を時間や場所の縛りから解き放ち、これまで個別に独立して存在していたあらゆるものの境目を曖昧にしました。AppleのCEO・ティム・クック氏は、2015年にThe Wall Street Journalが主催する技術カンファレンスWSJ.D LIVEで、同社がユーザーの生活のあらゆる次元でシームレスなエクスペリエンスを提供したいと考えていることを表明し、また、仕事と家庭生活を明確に区別する基準はないとも語っていました。
街乗りとアウトドアを両立させたクロスオーバーSUV車や、本を読みながらコーヒーを飲めるブックカフェなど、「それまで相容れなかった2つのコトを融合」させることで新たな利用価値やライフスタイルを生み出す製品やサービスが誕生し、今ではすっかり生活に定着し、珍しいことではなくなりました。空間関連では、グランピングやワーケーションなどが思い当たります。
最近では、コトの掛け合わせにより新たな価値を生み出すものだけではなく、飲食店から客席や接客カウンターを取り除いたゴーストキッチンのように、これまであるのが当然だったものをなくしたり、ネットサービスに置き換えたりすることで、提供者も利用者も共に価値を見出だせる「引き算の発想」による空間も実現しています。ECとの連携によるショールーミング店舗もそれに該当します。
持続可能な社会への変革によって
空間にも求められる「柔軟性や持続性、多様性の受容」
最近では、SDGsや循環型経済が、企業活動の重要な課題となってきています。既に市場では、容器を洗って繰り返し使う米TerraCycle社の循環型の購買プラットフォームLoopや、日本ではメルカリに代表されるフリマアプリのC2Cサービスなど、生活習慣や消費価値観を変えるサービスが台頭しています。空間、特に住宅においても、着なくなった服を誰かに譲るように、中古物件やリノベーション物件の販売サービスによって既に循環されていますが、所有者が変わるだけではなく、入居後長く続く生活の中で「時間と共に変化するニーズに柔軟に対応できる」ことも重要になってくるのではないかと考えます。
その時々の必要に応じてアプリをインストールし、それぞれのユーザーにとって常に最適な状態にすることができるスマートフォンのように、空間もその後の時間軸でのニーズの変化をあらかじめ想定した設計がされても良いかもしれません。また、同じくスマホがアプリで自分仕様にできるように、ニーズの多様性を尊重し、個々の満足度を最大化することもこれからの空間に求められるのではないでしょうか。
インターネット社会の到来、持続可能な社会への変革の影響下、変わりゆく空間のあり方。その変化の流れの延長線上にある次代の空間の新しい形。その仮説の下、本連載では、住宅とオフィスに焦点を当てそのあり方を考察したいと考えます。次回は、「住宅」についての考えを共有させていただきます。
文責
篠崎美絵
トリニティ株式会社 執行役員 / デザインコンサルタント・クリエイティブ・ディレクター
インテリアデザイン事務所でファッションブランドのブティックをはじめとする商業空間の内装設計に従事。
ミラノ工科大学にてデザイン戦略のマスターコースを取得後、2003年にトリニティに入社。
デザイン、カルチャー、ライフスタイルの観点から消費者価値観や市場の潜在ニーズを洞察し、
具体的な商品/デザイン開発のアイデア創出のためのコンセプトシナリオ策定、及び
トレンド分析を行うデザインコンサルティング業務を担当。
関連記事
空間デザイン最新動向:ニューノーマルでどう変わるか? 2/3|住宅編
2021/04/14
空間デザイン最新動向:ニューノーマルでどう変わるか? 3/3|オフィス編
2021/06/17
全国でいち早く「デザイン経営」を取り込む 富山総合デザインセンター~「デザインビジネス・スクール」で未来のための経営とデザインの場を創る~
2021/04/13