トリニティ株式会社

これまでのUIと、これからのUX。トレンドをどう取り入れるべきか?

公開:2019年3月27日 更新:2019年3月27日

今日のトピックは、今世の中で最も「無意識に」触れる機会が多いかもしれないデザインのジャンル「UIUXデザイン」についてお話しようかと思います。
まずUIの歴史の概略おさらいした上で、現在UIUXの分野で何が起きているのか、そして現在のトレンドを踏まえどう向き合うべきかを一部、お伝えしたいと思います。

UI創成期

UIは、コンピューターを操作するためにカードに打ち込まれた信号をコンピューターに出力させる、バッチインターフェースから始まりました。その後グラフィック性能向上により、1980年代以降はグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)が主流になりました。またindows95の発売はインターネットの普及と、Webデザインというジャンルを生みました。特に2000年代初頭、AppleがOSのデザインに「Aqua」というテーマを掲げたことで、UIデザインはマーケティングの手法として認知されるようになります。

スマートフォンの登場とUIの変化

こうしてトレンドはフラットデザインへと変化しました。2014年Googleが「マテリアルデザインというコンセプトを提唱し、これが現在のデザインのベースになっているともいえます。フラットデザインを後押ししたのは画面解像度の向上であり、紙の印刷と遜色のない表現が可能となりました。
近年はフラットデザインのシンプル性に奥行きを持たせようと「Gradient 2.0」を代表とする、グラデーション表現が広まっています。スクエア形状が主流だったアプリアイコンも円形型がグラデーションと組み合わせて使用されるケースが見られるようになっています。

出典:https://2019-worldpride-stonewall50.nycpride.org/

UIとUX。 UXは画面ではなく、体験そのものへ。

さて、今まで、パソコンやスマートフォンなど「画面の中」のUIについて記載してきました。ではここでUIと同時に語られることの多い論じられることの多い「UX」とは何なのか考えてみましょう。

 

『UX: 人工物(製品、システム、サービスなど)の利用を通じてユーザーが得る経験』
*コトバンク

 

こうしてみると、UXは決してスマートフォンやウェブ画面上だけの話ではないことがわかります。しかしなぜ、UIUXの言葉はウェブと同時に語られてきたのでしょうか。それはインターネットの発展と共に、webマーケティングが発展し、ウェブ上のインターフェイス体験が、そのままサービス全体の「体験(UX)」と捉えられてきたからです。

 

しかし、現在UIそのものに大きな変化の波がやってきています。
音声認識によるVUI (Voice User Interface)やVR/ ARをはじめとする拡張現実の例をはじめとして、新たなUIが生まれてきています。UIはより身体的、直感的になり、ミニマルな要素で構成されるようになりました。デジタル領域のトレンドがアナログ領域(リアル)に溶け出しており、その境界が曖昧になってきている例もあります。AI、IoTなどの発展による各デバイスのスマート化は、この流れを後押しする技術的なトレンドともいえます。

 

CES2019でBMWが出したコンセプトカーで謳われた “Shy tech”(Shy=控えめな tech=テクノロジー)のように”Invisible”な人の身の回りの生活空間の中に溶け交じり合い、人の生活と共生する、そんなテクノロジーの形が見え始めています。ハイテクノロジー要素が全面的に押し出されるプロダクトやサービスへの嗜好は減ってきており、より人間的・原始的な要素にひっそりとハイテクノロジーが眠っている。そういった新しい形のテクノロジーを人は求めるようになっているのです。
こうしてデバイス上の操作体験として認識されがちだったUXの文脈が、ディスプレイ画面を超え、体験そのものへと拡張され考えられるようになっています。UXの元々の定義を考えると、これは正しく認知がされはじめたということだけなのですが、様々な業界でこの潮流が共通して起こっていることは興味深い流れです。

 

体験(UX)そのものがブランディングの中で大きな役割を占めるようになるにつれ、今まで他サービスと違いを見せるためのファクターとして機能していたUIの役割も変わりはじめ、画面内のUIは(オリジナルタイプフェイスなど独自性は残しつつ)加飾性よりも実用性へ重きが基本的なものへ戻っていっています。

このように今までweb画面上の文脈で語られがちだったUXがリアル世界に及び、体験そのものに重要性がシフトしているとお伝えしました。ではもうUIの重要性はなくなったと言えるのでしょうか。そうではありません。
近年、アメリカを中心にアパレルなど小売り業界で、EC初のアパレルブランドが実店舗を構えるケースが増えてきています。身体にフィットするスーツの採寸などリアルなチェック機能が必要な部分を店舗に持たせながらも、部分購入手続きなどはオンラインで行う、そんな形態が増えています。リアル店舗はユーザーがブランドを感じることのできる重要なファクターであることは間違いありません。しかし、web上での購入体験やビジュアル要素もブランドイメージに大きな影響を与えています。実際リアル店舗に来るユーザーの大部分がECサイトの訪問がきっかけ、というブランドもあるほどです。

 

メンズファッションブランド Bonobos
出典:BONOBOS

デザイントレンドとは

デザイントレンドにはアウトプットに至る必然的な背景があります。デザインから語るとき社会的背景、行動心理的背景などの観点から語られることが多いですが、マーケティング的背景など既存のビジネスシームを全く無視した製品・サービスづくりはうまくいきません。「トレンドだから」という理由で要素の一部を切り取り表面的に採用したところでそのデザインに至った背景を見なければいけません。自社や個人の戦略や要件などの方針と沿う場合やポイントにだけトレンド要素を組み込んでいくのが、トレンドの活用・アプローチの上手いやり方です。ですからトレンドでUXがもてはやされているからと言って、急に全く経験のない所にUX要素を無理に入れ込もうとしたりする必要もないのです。
トリニティは表層的なデザインやトレンドを追うことをゴールとしていません。現在目に見えている結果に至るまでの社会的背景や歴史や個人にフォーカスしたデザイン的なアプローチ、そして長年の科学的な検証から定形化されたマーケティングのツール、双方を使い分けながら顧客の皆様の課題を並走しながら解決していきます。
UIUX以外にも様々な専門領域に関する知見を元に皆様のサポートをできればと考えています。


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文責

米山良明
トリニティ株式会社 デザインリサーチャー

精密機器メーカーで海外営業・マーケティングに従事した後Design、 Academy Eindhoven(オランダ)でプロダクトデザイン・情報デザインを専攻。帰国後は国内のプロダクト・インテリアのデザイン事務所でデザイナーとして勤務。2017年よりトリニティで現職。ジャンル問わず、デザインリサーチャーとして最先端のデザイン、技術等のトレンド情報を収集、分析している。