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Dutch Design Week Interview

公開:2016年12月6日 更新:2016年12月6日

「Designs for Flies-家庭用疾患治療薬スクリーニング・キット」は、ジュリア・カセムD-lab特任教授により監修のもと、オランダ人デザイナーのフランク・コークスマン氏、京都工芸繊維大学応用生物学部の山口政光教授、日本シャルコー・マリー・トゥース病センター、京都府立医科大学の共同研究として開発されました。3ヶ月(リサーチとデザイン設計)+3ヶ月(ビデオ制作と製品の改良)の2期に分けてトータル6ヶ月間のプロジェクトで開発され、この度、Dutch Design Award 2016サービス・システム部門を受賞しました。

フランク・コークスマン氏に、受賞された日本でのコラボレーションプロジェクトについてお話を伺いました。

インタビュー:

Q.日本の企業や機関とコラボレートするにあたり、どのようにお感じになりましたか。特に違いを感じたところはありますか?

これまで私が携わったプロジェクトと全く違いました、ずっとやりやすいと感じました。

今回のプロジェクトでは、私は日本の大学の科学者の方達とコラボレーションしましたので、産業にすぐに直結していませんが、初期段階からプロジェクトに加わりました。これが大変良かったと感じています。サイエンティストの方々で完成させてしまう前に、デザイナーとしてプロジェクトに参加できたことで、これまでにない革新的なアイデアを試行錯誤することができました。

また、私がオランダ人であり、他の方々が日本人であったことによる言語による障害がありましたが、これが功を奏したと思います。というのも、私たち全員が、母国語以外を話さなくてはいけないという環境にあり、例えば科学者である山口教授も同じくこの研究で彼が何をしているのかを他の国の言葉を用いて、私に説明する必要がありました。つまりシンプルな言葉で彼がこのプロジェクトで何をしているかを私に説明する必要があったわけです。そしてコミュニケーションを補うために、私は、まず山口教授が説明してくださったことをすべて簡単にスケッチに描きおこし、正しく図解できているかチェックしていきました。その後もこのダイアグラムを用いて研究のそれぞれのステップについてチェックを繰り返しました。

これにより、研究のプロセスをズームアウトして、この研究で何をしているのかベーシックなレベルで確認&理解し、私が本プロジェクトで何を成し遂げなければいけないのか確認していくことができたのです。

例えばもし母国オランダの科学者と共同開発したとしたら、私はすぐに彼らの話を理解することができるでしょう。それは、彼らがより複雑な言葉を用いてプロジェクトについて説明することを意味し、結果として、逆に彼らが何を考えているのか、頭の中を理解することが難しくなってしまうというわけです。

しかし、ここでは私たち全員が自分の考えをシンプルかつ明瞭にする必要があり、結果、それぞれのアイデアのコアとなる部分を明確に共有することができました。

2つ目に、今回の経験の中で感じたのは、日本はとてもアイデアにオープンであるということです。

Open mindedであるという意味ですか。

いえ、もっと思考に関する構造的なことです。

オランダでは、みんなすぐに発言したがります。でも、日本では自分の考えを述べるのまでに時間がかかります。すぐに反応しない代わりに、一度持ち帰り、何度か考えて次の週に適切な答えを持ってくる。このことが、今回のコラボレーションプロジェクトにおいて良い状況を生み出したと考えています。

オランダでは、話し合いがとても混乱し、何に向かって話し合いをしているのかわからなくなることがよくあります。なぜなら、少しでも早く貢献したいと考えて、皆が皆、すぐに意見を述べてしまうからです。

日本では、逆にそれぞれが考えすぎて時間をとりすぎてしまい、問題となる場合がままあります。オランダ人と日本人の気質が正反対であることで、お互いの良いところを持ち寄り、円滑にプロジェクを進めることができるのかもしれませんね。

私が知る限りでは、日本人がコラボレートすると、各々が他の方を尊重して物事がゆっくり進んでしまう傾向があると聞いています。一方、オランダでは、全てがとっても早く進みます。そして、そのせいで行き先を見失ってしまう傾向があります。この2つの性質のコラボレーションは大変相性が良いと思います。テンポよく進め、時には、少しスローダウンして自分たちが何をしているのか確認して、着実に先に進めていくことができるのです。

良いバランスですね。

良いバランス、その通りです。

Q.医療機関やテクノロジーの分野で今回のような初期段階からのデザイナーとのコラボレーションは増えて行くと思いますか。

ええ、そう思います。
実際もともとデザインの起源はそういうものですし、デザインとはテクノロジーと市場を調整するためのものでした。
近年になってから、デザインが小さい泡のように離れて行ってしまったのではと思います。ただし、それはデザイナーとテクノロジー業界のコラボレートがストップしたのではないと感じています。むしろその反対だと思います。
特に日本では、インハウスデザイナーの割合が大多数をしめていますし、基本的にずっとそれは続いているのだと思います。

今回のプロジェクトの面白いところは、すぐにコマーシャルプロダクトとして発売されない製品の開発に初期段階からデザイナーとして加わったということです。

今後このようなプロジェクトは増加して行くでしょう。

世界中で、でしょうか。

もちろん世界中で。ですが、特に日本でだと思っています。
日本企業は、多くの仕事が中国に流れて行っていることに気づいています。発明し新しいものを産みださないといけません。

習慣的に、日本人は昔から焦点を当てることに長けています。必要なことは、人々が新しいアイデアに挑戦することと、そのアイデアを試行錯誤しながら少しずつ変化させていくことだと思います。

インタビュー後のお話の中で、フランク氏は、日本のモノは、たくさんの気遣いや思いやりとたくさんの着眼点でできており、各企業が流されるままに物を生産するのではなく専門性を持ち続けている事が、ヨーロッパから見た日本の産業の魅力ではないかとお話してくださいました。
日本特有の心遣いと、探究心から産まれる製品を、世界市場へと送り出すお手伝いができればと思います。

フランク・コークスマン氏 インタビュー/ きたともこ – T Magpie Design –

T Magpie Design & Design Management
Tomoko Kita
http://www.t-magpie.com