トリニティ株式会社

組織としての“着想能力”を磨き、
0→1で次なる研究テーマを見つけ出す。

日清オイリオグループ株式会社

技術本部基礎研究所第3課 主事 池口 仁美 氏

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トリニティ株式会社 山口 崇

進行:
トリニティ株式会社 大久保泰子

組織としての“着想能力”を磨き、0→1で次なる研究テーマを見つけ出す。

“植物のチカラ®”で多彩な価値を創造し、食用油から調味料、高齢者・介護用食品や化粧品原料まで、
幅広い事業を展開する日清オイリオグループ。
その研究開発の一翼を担う基礎研究所の皆さんと共に、
未来を見据えた新たな研究テーマの開発に挑んだトリニティ。
プロジェクトの事務局を務められた池口さん、トリニティ山口が当時を振り返ります。

日清オイリオグループ株式会社

技術本部基礎研究所第3課 主事 池口 仁美 氏
×
トリニティ株式会社 山口 崇

進行:トリニティ株式会社 大久保泰子

未来研究戦略を担う研究所の発足、 その活動基盤づくりの第一歩

まずは今回のプロジェクトが始まったきっかけから教えてください。

日清オイリオグループ 池口仁美氏(以降、池口):2024年の4月に当社の研究部門の機構改革があり、私が所属する基礎研究所が発足しました。基礎研究所は「未来研究戦略機能」を担っていて、グローバルな視点で未来志向型のテーマを発掘し、グループ全体の基礎研究戦略を立案・実行・発信するのが役割です。その活動基盤や組織づくりをどう進めていくか、トリニティさんにご相談したのが始まりです。

 

 トリニティさんとはその前からお付き合いがあり、2023年に他社さんと合同のアイデア創造研修でお世話になったのが最初でした。

その際、トリニティさんが私たちのいろんな思考やアイデアを引き出してくれて、物事の多面的な見方も教えていただき、それが非常に良かったので、今回もまず山口さんに相談したいなというのがありました。                                                                       

 

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見えない未来に視点を拡張し、研究テーマを見つけにいく

プログラムの設計から多くのディスカッションを重ねられたそうですが、どんなやりとりがあったんでしょうか。

トリニティ 山口(以降、山口):所長の土屋さんから最初にお聞きしたのが「基礎研究所を0→1をつくる組織にしたい」という想いでした。そのためにも、トップダウンではなくボトムアップで所員の側から新しい研究テーマのアイデアがどんどん出てくる組織でありたいということで、その体制を築くための基盤づくりを一緒に考えて欲しいというご相談でした。

池口:そうですね、基礎研究所は、より長期的なスパンの研究を行う組織ですから、いま見えている世界ではなく、もっと先に目を向け、解決すべき課題と研究テーマを見つけ出していく必要があります。その“着想能力”を組織としていかに向上させるかが課題でした。

山口:いろいろなやり方が考えられるので、まずは土屋さん、池口さんたちの想いをフランクに話していただき、こちらからラフなプログラム案を何パターンかお出ししながら徐々に内容を詰めていったかたちです。

 当初は定石通りに基礎研究所のパーパスからつくる~というような案もあったのですが、基礎研究所の皆さんの現状や特徴に鑑みると、0→1をつくる組織になるためのスタートダッシュとしてはパーパスのような抽象度の高い議論から入るのではなく、基礎研究所の所員として皆さんが新たに求められている業務で活用できることを優先したほうが効果的ではないかという話になりました。そこで皆さんのアイデア創造力の底上げを通じて個々の気持ちを加速させることを直近のゴールに設定しました。具体的には「2030年以降を見据えた研究テーマアイデアの創出」をテーマとして、0→1で思考するためのアタマの使い方を体感いただけるような研修ワークショップ・プログラムを設計しました。まぁ、ざっくり言うとそうなんですが、ここに至るまでにはかなりディスカッションしましたよね(笑)

池口:ですね(笑)。0→1をつくる組織を目指すといっても、具体的にどこにフォーカスするかとか、何度も根本に立ち返りながら話し合い、プログラムを練っていただきました。
 でもこの課程で、私たちの中でも徐々に重要点が整理できたと思います。0→1をつくる組織、トップダウンからボトムアップ、そして研究テーマの創出力。かつ、これらを継続・更新する持久力も必要です。1回で終わりじゃなく、新たな研究テーマを出し続けることが重要ですし、それを組織として自走させたい。内部ではこの部分を「研究テーマ立案システム」と呼んでいて、今回のトリニティさんとの研修プログラムもその一環になります。

研究のポテンシャルを引き上げ、内発するための環境づくり

ここで池口さんご自身について少しお聞かせください。

池口:本社の財務や知財部門などを経験して、4年前に研究開発部門に配属されました。文系出身で研究職ではない私がここで何をしたらいいだろうと(笑)、最初は手探りでしたが、先ほど話した他社さんとの合同研修で事務局を担当することになり、私が期待されているのはこうした環境作り、組織づくりの部分だと徐々に自覚するようになったんです。所員がより良いかたちで研究を実践できるようサポートを行い、基礎研究所が組織として“なりたい姿”になるための基盤をつくることが私のミッションだと思っています。

とても重要なミッションですね。

池口:そうですね。所長をはじめ、マネジメント層の考えと研究所のみんなの想いをつなげる役割でもあります。

今回のプロジェクトでも事務局を担当されました。取り組まれてみて、何が印象に残っていますか?

池口:今回は基礎研の総勢30名の全員参加でした。参加者の意欲を高めたいですし、研修プログラムとなるとゴールを明確に設定しないといけないというのがあるので、そこはプレッシャーでしたね。また、人によって考え方も熱量も違いますし、いろんな意見があるので、事務局としてそこをまとめるのが正直難しかったなと(笑)。一方で、それでも基礎研究所の中には複数の課があり、普段の交流が少ない所員もいます。今回のプログラムでは課を横断したチーミングでワークショップを行ったので、交流の良い機会になったと思います。

バランス感覚を強みにしながら、いかにはみ出すか

山口さんは他社の研究部門や技術部門の方々とのプロジェクトも多いですが、今回の基礎研究所の皆さんとの取り組みはいかがでしたか?

山口:皆さん基本的にとてもまじめで、でもアイデア創出に不可欠な「思考を飛ばす」ことについてはちょっと苦手(笑)。ただ他社の研究部門の方々に比べるとマーケティング的な観点をお持ちの方も多く、そこは皆さんの強みだと思います。日清オイリオさんは内部で生活者のトレンド情報をまとめられていますよね。

池口:「生活科学研究」のレポートですね。30年ほど前から続けているもので、生活者の食に関わる意識や価値観を毎年調査して、お客さまにお渡ししたり、もちろん社員もそれを読んでいます。そういった土壌が私たちの個性になっているんだなと、山口さんのお話で気付くことができました。

山口:もうひとつ、皆さん研究職でもいろんな部署を経験しているせいか視野が広く、メタ認知もできるし、もちろん研究者として深掘りも得意で、とてもバランス感覚が優れている印象です。一方で、「こんなこと言っていいのかな」みたいなブレーキもある。このブレーキをどう解除するかがひとつの焦点でした。

池口:そつなくまとまったアイデアよりも、いかにはみ出すことにトライしてもらうか。その点は山口さんとも事前にかなり話し合ったところですよね。

プログラムではどんな工夫をされたんですか?

山口:今回はアイデア創造のフェーズと、そのアイデアを精査するフェーズの2段構えにして、前段は所員の皆さんを主体に、新たな研究テーマのドラフトアイデアを複数つくりました。はじめに、思考を飛ばすウォーミングアップを兼ねて事前宿題をお願いしたんです。世の中に実在する植物の特性を調べ、その中から自分がおもしろいと思うものを出してもらいました。

池口:当社のコーポレートステイトメントである“植物のチカラ®”に紐付くものです。当社ではこれまで植物そのものを対象にした研究は多くないのですが、敢えて普段の研究とは違う領域で、かつ当社らしい切り口を今回のアイディエーション・テーマにしたいねということで、山口さんと相談して決めました。

山口:皆さんに宿題をやっていただく前に、お恥ずかしながら僕自身がおもしろいと思った植物の特性をサンプルとして見ていただきました。研究者ではない僕が何をおもしろいと感じたか~をご提示することで新たな着眼点を見出していただくヒントなればと考えたからです。ご自身の研究分野や専門知識に囚われずにどんどん想いを発信いただけるようなベースを創りたいという意図もありました。

池口:植物というものの捉え方自体が山口さんと内部のメンバーでは全然違って、その違いがみんなにとって新鮮だったと思います。最初は少し戸惑った人もいたと思いますが、今までと違う頭の使い方を意識してもらうためのものなので、まずはゴールにフォーカスしすぎず、単純におもしろいと感じたものを出してくださいと説明しました。結果的にみんなとても熱心に取り組んでくれて、たくさんの情報が集まりました。

その宿題自体も大事な成果物ですね。

池口:そうなんです。今後も研究テーマを考える際のアイデアの起点にできればと思い、データをアーカイブしてあります。

(左)池口 仁美 氏、(右)山口 崇

タテ・ヨコ・奥行き、思考を広げるバイプレイヤーとして伴走

ワークショップ最終ステップの検討会はどのように行われたんですか?

池口:所員たちが創造したドラフトアイデアを、マネジメントを中心としたメンバーが研究テーマとして精査しました。でも何をどう検討していくか、これも悩みどころでしたよね。

山口:そうでしたね。ただこのプロジェクトの目的のひとつに、今後も継続して研究テーマを開拓していくための基盤づくりがあったので、最終的に、研究テーマ立案の際に重視すべき視点というかたちで整理していくことになりました。

池口:検討会の当日もいろんな意見が出ました。私たちは自社のことなので客観視が難しく、また自分の専門領域だと細かいところが気になってしまう。また立場によっても意見が違います。さまざまな意見をどうまとめよう、となったときに、山口さんが「広い目でみるとこういうことですよね?」と整理してくれて、その言語化がすばらしかった!

山口:場面的にかなり議論も散ってきたので、ここは専門外の自分だからこそ見えることを客観的にお伝えすべきだなと思い、それまでの皆さんの意見を俯瞰して言語化してみたのですが、それが功を奏しましたね(笑)。

池口:それでみんなが「これだ!」となりました。

改めていまプロジェクトを振り返ってみてどう感じられますか?

池口:参加したメンバーは自分たちの考えが言葉化され、満足感があったようです。今までと違う頭の使い方を経験できたという声もありました。ただ所長からは、ここで終わってはダメで、これをさらに自分たちらしく磨き上げていくことが重要だと言われています。

 今後は新しい研究テーマを出していくと同時に、今あるテーマの研究も進めていく必要があるので、その両立が新たなトライアルになります。また以前から蓄積している技術アイデアもある中で、それらを活用できるプラットフォームを整備し、組織として体質化していくことが個人的な取り組み課題です。楽しい、苦しい、両方ですね(笑)。

トリニティの動きはいかがだったでしょうか?

池口:トリニティさんが食領域の専門ではないことも私たちにとってプラスだったと思います。常に意外な視点を持ち込んでいただき、他の業界の事例も教えてもらってとても刺激になりました。山口さんは、こちらがヤモヤととりとめのない話をしても、それってこういうことですよね?と言語化してくれて、かつそれを拡張してくれます。タテ・ヨコ・奥行きを広げながら伴走いただけるのがとてもありがたいです。また、トリニティさんの「ゆる〜くつながる会*」のようなイベントもそうですが、社内では経験し得ないような外とのつながりの場を提供いただけるのがうれしいです。そうやって視野を広げていかないと、先を見据えた新しい研究テーマは出てこないと思いますし、私たちにとって貴重な機会です。

山口:ありがとうございます。これからもそういう場をご提供していきたいと思います!

*ゆる〜くつながる会(通称ゆるつな):2023年からトリニティが開催している、いろんな企業の人たちがゆるく集まって真剣に話し合う、ありそうでなかったイベント。

(取材・撮影日:2025/08/27 場所:日清オイリオグループ株式会社 横浜磯子事業場 所属・肩書は取材当時のものです。)

研究所という内に閉じがちな環境だからこそ、 ひらかれたマインドセットで“次”を切り拓く。

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