「デザイン思考」をベースとした商品企画プロジェクトに伴走して今年で3年目になりました。そもそも私たちトリニティにコンタクトしていただいたきっかけは、どんなことだったのでしょうか。
開発過程だけでなく、一人ひとりの成長ステップやモチベーションを丁寧に「デザイン」する。
株式会社ニッスイ
商品開発部 担当課長
増田寛子氏
聞き手:山口 深澤(Trinity株式会社)
開発過程だけでなく、一人ひとりの成長ステップやモチベーションを丁寧に「デザイン」する。
株式会社ニッスイ
商品開発部 担当課長
増田寛子氏
聞き手:山口 深澤(Trinity株式会社)
「デザイン思考」をベースとした商品企画プロジェクトに伴走して今年で3年目になりました。そもそも私たちトリニティにコンタクトしていただいたきっかけは、どんなことだったのでしょうか。
トリニティ 山口崇(以下、山口):最初のコンタクトは、当社サイトのお問い合わせフォームからのご連絡でしたよね。
ニッスイ 増田寛子氏(以下、増田):6年ほど前からニッスイでは生活者起点での商品企画・開発を行うことを目的に「デザイン思考」を取り入れてきました。理論としては学んだものの、実際の開発業務にどう落とし込んでいくかという点に不安もあり、会社の特性や状況などを理解した上で実務に浸透させていく過程を伴走していただけるようなパートナー企業がいないかということで、いろいろと情報収集を進めていました。そのなかで、メンバーの一人がトリニティさんのWebサイトに辿りつき、コンタクトしたのがきっかけです。
当然その時点では、複数のパートナー候補があったなかで、トリニティを選んだ理由は?
増田:数社から提案をいただいたのですが、各社フォーマットとしてお持ちのプログラムを提案してきたなかで、トリニティさんは限られた情報のなかでも当社の特質や条件などを汲みとって、オリジナルで組んだ提案をしてくれたことが大きかったですね。もう一つは、こういった分野の場合、難しい言葉を多用して説明されることが多いのですが、当社はカタカナ語が苦手な社員も多く(笑)、専門用語に頼らずに噛み砕いてわかりやすく山口さんが説明してくれた、というのも印象に残っています。
山口:そうでしたか。デザイン思考の「理論」よりも、どうモノゴトを捉え、どう考えていくべきかということをお伝えていくことが重要だと思っていました。
僕が印象に残っているのは、当時フロントでお話をしていた担当の方からは早い段階で1年契約でというオファーをいただきうれしかった反面、長期にわたって伴走するとなると、正直、会社同士の相性もあると思っていたので、まずはスモールスタートでいきませんか、というご提案をした記憶があります。大きなお仕事を、自らあえて半分にするという(笑)。
増田:でも、そういう実直なご提案をいただいたことで、安心してスタートを切ることができたのも確かです。
会社の特質にあわせた伴走、というお話もありましたが、プロジェクトを進行させていくうえで、ニッスイさんならではの課題というのは、特にどのあたりに感じましたか?
山口:とにかく皆さん「真面目」なんです。研究職、理系という言い方で切り取ってしまうのはどうかとも思うのですが、きちんとした理由を積み重ねて思考していくことに非常に長けているという印象を強く受けました。ただ「デザイン思考」では、人の感覚・感情を捉えていくという点で理詰めでは説明がつきにくいところも出てきます。ステップ間を行ったり来たりする、といったことも含めてですね。そういった「デザイン思考」ならではの“モヤモヤ”する過程の受け入れ方といいますか、逆に楽しんで欲しいといったところは強くお伝えするように心がけました。
増田:「真面目」というのは自他共に認める特質です(笑。真面目に取り組むことは長所でもあり、弱点でもあります。私たちも、これまでの視点を変えていかなくてはいけない、というところで、どうしても自分たちだけだと既存から抜け出すことが難しく、不安に思っていたことでした。
それと、視点や考え方を変えていく、という点では、トリニティさんが食品業界に特化したコンサルティングではなかったこともよかったのかなと。例えば自動車業界や耐久消費財系の例など、幅広い情報を提供していただくことで、視野も広がったと感じています。
山口:皆さんのなかにある思考の「壁」を崩していきたい、という思いはあったので、皆さんが触れたことがないような事例などを紹介してみたり、ここまで発想を拡げていいんだ!ということを理解していただくために、あえて思いっきり遊んだアイデアを投げ込んでみたり、といったこともトライしましたね。
増田さんがリーダーとしてプロジェクトを運営していく上で、大変だったことは?
増田:社長はじめ経営層からの期待値が大きく、同時に、“いまないものをつくっていく”というプロジェクトだけに「経営」「現場」共にどの程度の“新しさ”をめざしていくのかといった評価軸もバラバラで、提示と議論を繰り返しながら推し進めていかなければならなかったことが大変だったといいますか、いまもまだ現在進行形で大変なところです。
山口:しかも、経営層からの期待値がどんどん変化していくというところをどう捉えて、実際のメンバーの方々のモチベーションを保つかというのは、難しいところですね。
経営層へのプレゼンテーションの場面では、私も毎回同席させていただくのですがプロジェクトも3年目を迎えて、1年目とは求められる成果も成果の測り方もステップアップしていると感じています。
実際にはどんな変化があったのでしょうか。
山口:1年目に関しては、スタートということで教育的な側面が強かったですね。求められる成果としても、従来の視点からどう変化させることができたか、言い換えれば、実現性よりも発想力の強化が求められていたところがありました。その点が1年目評価されたことで、2年目は市場動向などの捉え方も含めてもう少し実現性の高いものを、3年目の今は、将来の軸となるようなものを求められていると理解しています。
増田:開発メンバーのモチベーションのケアまで配慮していただけることは、とてもありがたいです。
課題になりそうな社内事情も山口さんには常日頃から相談し、寄り添っていただいています。
最近では、ワークショップのなかでも、いまのはちょっと間違った伝わり方をしそうだな、、、みたいな時は、山口さんに目で合図をすると、お互い「了解!」みたいな、言葉を交わさずとも感じ取っていただけるというか(笑)。
山口:開発のステップを前に進めていくことも大事なのですが、メンバーの方々のモチベーションだったり、お一人おひとりの成長といいますか、特性や強みを活かした力の発揮の仕方をサポートするという点には当初から注力していましたし、都度やり方等も変化させながら伴走しているイメージです。
増田:私としても、個の能力だけでなくチームで成果を出していくことにこだわりたいということもあり、モヤッとしたご相談をすることも多いのですが、、、そんな時も、山口さんは決して「できません」とはおっしゃらないんです。必ず解決法を見つけてくれて、その方法がいつも「その手があったか!」と、いい意味で期待を裏切ってくれて心強く思っています。
プロジェクトを通して、成長したなというメンバーもいらっしゃるのでしょうか。
増田:参加したメンバーそれぞれが確実に成長していると思います。
たとえば、あるメンバーは1年目は自分だけで走っていたのに、2年目では他のメンバーを巻き込みチームを牽引していくような姿が見えたり。
いまは開発業務という垣根を越えて学んだ力を発揮してくれています。
山口:最初は、誰かの意見に追随することが多かったのに、しっかりと自分の意見を主張するようになられた方もいらっしゃいますよね。
増田:そうやって「デザイン思考」としての新たな視点を体得し、なおかつ自分らしさを発揮してパワーアップしたメンバーが他部署への異動などをきっかけに、会社全体に少しずつ変化をもたらしてくれている実感もあります。実際、企画部門との定期的なアイデア会議なども動き出し、ヨコのつながりも拡がりはじめています。
今後、増田さんがやっていきたいことなどはありますか?
増田:大学生の頃から、自分が作ったモノをいろいろな方々に使っていただいて、反応を感じとったり、喜んでいただく様子を見てみたいという気持ちがあり、メーカー勤務を希望したのですが、今まさにそれが実現できています。正直、大変なこともたくさんありますが(笑)、新しいモノを作るということが本当に好きなので、その一心で頑張れています。
山口:一度始めたら、辛くともやり通す。やっぱり増田さんも「真面目」なんですね(笑)。
増田:いままさに山口さんに伴走いただいている企画も、ぜひ商品化までつないで、生活者の皆さんの反応を実際にみてみたいなと思っています。私たちニッスイの新しいコーポレートスローガンでもある「まだ見ぬ、食の力を」という世界を、ぜひ提供していきたいですね。
(取材・撮影日:2023/07/03 場所:株式会社ニッスイ東京イノベーションセンター 所属・肩書は取材当時のものです。)
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主体的に『考え・行動』する、自律型の人と組織をつくり、人的資本経営を支援します。
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