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TIPS by Trinity : デザイン思考を補完し、より本質的な課題解決へ導く『システム思考』の全体最適とは?

公開:2026年4月10日 更新:2026年4月10日

ユーザー中心の「デザイン思考」。

みなさんは既に、聞き飽きているかもしれません。
それほど、ビジネスのあらゆる場面でこの思考法が採り入れられるようになりました。

筆者作図

私たちもかねてよりデザイン思考を用いたプログラムを提供しています。
人財育成から新規事業開発に至るまで、顧客企業の様々な目的に応じ、カスタマイズしてきました。

しかし、この思考法が定着するにつれ、「課題」も見え始めています。

デザイン思考の “盲点”

デザイン思考は、それまで「企業側の都合」で製品やサービス、技術や手法を開発していた結果、
実際のユーザーニーズとの齟齬が生じていた状況を打開するために生まれ、その有用性が認められてきました。
ある種の “意識改革” が必要だったわけです。

ところが現実には、ユーザーの気持ちになって彼らが必要とするものを具現化しても、気づけば元の木阿弥で、
結局は商品が売れることや市場の競争に勝つことに意識が戻ってしまうことが少なくありません。

なぜでしょうか。

それは、デザイン思考が

・「特定のユーザー」に専念している
・「今の課題」にフォーカスしている

からだと考えます。

つまり、ある「地点」で考えを巡らせているということです。
ユーザーの課題を解決するアイデアが具現化されたとき、それは周囲にどのような影響を与えるのか。
バタフライエフェクトとまでは行かなくとも、プロジェクトに関わるすべての人や、
企業・市場・社会へのインパクトも含めて捉え、本来は “特定のユーザー” や “今” といった
「部分」ではなく、「全体」の最適化を考えることが重要です。
その必要性に多くの人が気づき始めているのではないでしょうか。

筆者作図

そこで、注目されているのが『システム思考』です。

生態系で見る『システム思考』

システム思考は、大局的に物事を捉える思考法です。
個々の要素はそれぞれ独立して存在するのではなく、互いに影響し合い変動する「有機的なシステム」の中に存在している。
その関係性や連鎖を明らかにし、全体の仕組みを把握することで、本質的な課題解決を目指す考え方です。

例えば、コロナ禍での外出規制をきっかけに普及したリモートワーク。
これは単に通勤や移動の負担を減らしただけでなく、子育てと仕事の両立や二拠点生活など、
新しいライフスタイルを可能にしました。

一方で、

・社内の日常的なコミュニケーションの機会が減る
・オンライン会議が増え、逆に忙しくなる
・電車の通勤利用客が減る

といった弊害や、外部への影響も生まれました。
さらに、その動きが一巡すると、今度は”対面”の意義があらためて見出され、オフィス回帰が生じたりもします。

このように、様々な要素が因果関係となり、相互作用しているのです。

言わば “木を見て森を見ず” の逆です。

出典:CANVA

システム思考は、

・目に見える表層的な課題ではなく、仕組みの中にある本質的な課題を解決する

ことに加えて、

・関わるすべての要素が互いにプラスに働き、望ましい/幸福な状態になる
・その仕組みが好循環することで持続可能になる

という点も、重要な視点として含んでいると解釈できます。
つまり、社会全体の「ウェルビーイング」にも貢献し得る思考法なのです。

氷山モデルと因果ループ

システム思考は、起源は古いものの一般的には、システム科学者のジェイ・フォレスターが発案 ⇒ ピーター・センゲがビジネスに適用 ⇒ 環境科学者のドネラ・メドウズがわかりやすく体系化、といったプロセスを経て、実用化されています。そのフレームワークをざっくりとご説明しますと…

縦方向の思考「氷山モデル」

「氷山モデル」は、問題の深層にある要因を探り、本質的な解決へ導くためのフレームです。
海面上に見えている “出来事” だけでなく、その下にある “パターン”“”構造” “メンタルモデル” を掘り下げていきます。
「縦方向」の思考モデルと捉えると、イメージしやすいかもしれません。

横方向の思考「因果ループ」

一方、「因果ループ」は「横方向」の思考モデルです。
時間軸に沿って複数の事柄の因果関係を見ていきます。
ループなので循環します。これを “フィードバックループ” と呼びます。

筆者作図

氷山モデルで明らかにした「構造」をもとに、因果ループを描くのが基本のようです。
実際に自分で考えてみると、これがなかなか難しいのですが、当て嵌まりそうな時事ネタを思い付いたので、
例として挙げてみます。

・最近、美容院を辞めてフリーランスになるベテラン美容師が増えている。
・独立して自分の店を持つのではなく、ドラマ「ドクターX」のように、どこにも所属せず業務委託契約で働く人たちである。
・これは、働き方の多様化が美容師にも及んでいる証である。
・だが美容院にとっては、その人と一緒にその人についているお客さんもいなくなる、業務委託なので新人教育まで課せられない、
というデメリットもある。
・それだけでなく、美容院の倒産件数増加の要因の一つである「人材不足」も加速させる。
・また、働き方改革を背景に、新人が定時に帰り居残り練習をしないためスキルアップしにくいことも人材不足につながっている。
・その結果、ベテランに指名が集中し、業務時間中に教えることが難しくなる。
・多忙さや教育任務の負担も、ベテランのフリーランス化の動機になっている可能性がある。

この状況を、氷山モデルと因果ループに落とすと、次のようになります。

筆者作図

筆者作図

この話を本物の美容師さんにしてみたところ、確かにそうだと納得しつつも、
最近はわかりやすく教えてくれるYoutube動画がたくさんあると教えてくれました。
カットやパーマが上手くても、教えるのが上手いとは限らないとのこと。
この例は賛否両論あるかもしれませんが、ベテランが新人に教える様子をYoutube動画にする企画を立てたら、
新人さんたちも積極的に参加するかもしれません。
若い世代の方がSNSに慣れているので、編集などの面ではベテランと新人の立場が逆転することもあり得ます。
それが、両者にとって良い関係性を築くきっかけになる可能性もあるでしょう。

自己強化型ループとバランス型ループ

システム思考では、2種類の「因果ループ」が提示されています。

1.自己強化型ループ
変化が連鎖的に拡大していく好循環・悪循環を指します。
例えば、SNSでのバズりがさらなるバズりを呼ぶ、ネガティブ思考が状況をさらに悪化させる、といった現象です。

2.バランス型ループ
変化の勢いを抑制し、安定させる動きです。
流行して入手困難だったものが、人々の熱が冷めて普通に買えるようになる、といった “逆向きの力” が働く現象が典型例です。

昨今、急速な進化を遂げるAIサービスを例にとると、より身近に感じられるのではないでしょうか。

筆者作図

【自己強化型ループ】

AIサービスの急速な進化
⇒ 魔法のような新しいツールに高揚
⇒ 便利で重宝することを実感
⇒ さらなる利便性と質の高さを要求
⇒ AIサービスの急速な進化(止まらない発展のループ)

【バランス型ループ】

AIサービスの急速な進化
⇒ 依存による思考停止/仕事を奪われる恐怖
⇒ 社会不安の増加(健康被害や失業問題など)
⇒ モラルの追求、規制強化
⇒ AIサービスの急速な進化(暴走を抑止するループ)

このAI開発のデッドヒートを生み出している、氷山モデルでいう「メンタルモデル」は何か。
それを「AIを使いこなす=勝ち組」「AIに奪われる=負け組」という価値観だとすると、
ループを “みんなが幸せになる流れ” にするためには、「人との共生」を前提にすることが必要になります。

これはあくまでも一例ですが、そのように “小さなテコ入れ” をすることで全体の流れを大きく、
良好な方向に変えることをシステム思考では「レバレッジ」と言います。
メンタルモデルを踏まえつつ、「ループのどこを変えると全体が変わるのか」というレバレッジポイントを見つけること——それが、システム思考の最終的な目的です。
少し、人生ゲームにも似ているところがあるかもしれません。

システム思考で “強化” するデザイン思考

私たちトリニティ株式会社では、デザイン思考が “木を見て森を見ず” にならないように、
アイデア創出の過程でシステム思考を採用することを考えました。
このプログラムは、人材育成の研修目的の利用はもちろんのこと、
実際の商品/事業開発のための創発プログラムとしてもご提供しております。

筆者作図

具体的には、デザイン思考プロセスの「アイデア創出〜具体化」の段階でシステム思考を用います。
生み出されたアイデアが “絵に描いた餅” にならないよう、より盤石なものにしていくための作業です。

システム思考をより大きな生態系のレベルまで広げて見ると、競合の動きや経済・社会リスク、法令や制度といった
要素も含まれてきます。
本来はそこまでズームアウトして捉えるべきものかもしれませんが、私たちのプログラムでは、
デザイン思考の強化を前提に、サプライチェーンなど商品/事業に近い要素にフォーカスします。
その上で、「すべての関係者が幸福になる設計」を目指していきます。

“VUCA時代の創発プログラム” の一つとして

この『デザイン思考✕システム思考』の取り組みは、
弊社が推進する「VUCA時代のデザイン思考プログラム」のメニューの一つに位置付けています。

予測困難で不確実な時代に、社会的意義があり、かつ持続可能な商品/事業を創造することを目的に、
以下の3つの方向性で開発支援サービスをご提供しています。

筆者作図

・プロジェクト関係者全体の幸福と持続可能性を視野に、
アイデアを “使えるもの” へと盤石にする『デザイン思考×システム思考』

自ら問いを立て、まだ見ぬ価値を創り出す未来志向のアート思考を採り入れ、
デザイン思考のアウトプットの質を高める『デザイン思考×アート思考』

そして、自社の独自技術を中心とした「知財」にフォーカスし、
ユーザー視点のデザイン思考で潜在ニーズとのマッチングを図る『シーズ起点のデザイン思考』

企業の多様なニーズにお応えできるよう、これら3つの方向性でご支援しています。

・デザイン思考は実践してきたが、どこか不足感を覚えている。
・システム思考に関心があり、商品/事業開発で実践してみたい。
・経営陣を含むインナーコミュニケーションの促進に活かしたい。
・総合的な思考力を高める人財育成に採り入れたい。

そのようなご要望がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
文:トリニティ株式会社・篠﨑美絵

この記事をお読みになりご関心をお持ちの方へ。
複雑化する社会においては、個別最適ではなく全体のつながりを捉える視点が、より良い意思決定や価値創出につながります。
トリニティでは、多様な立場や視点が交差する場づくりを通じて、物事の構造を捉え直し、

新たな可能性を見出す取り組みを行っています。
ご興味のある企業・団体の方は、ぜひお問い合わせフォームよりご相談ください。

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