ミラノデザインウィーク2019の視察
公開:2019年4月15日 更新:2019年4月15日
毎年ミラノで4月に行われるインテリアを中心としたプロダクトデザインの祭典「ミラノサローネ」に今年も行き、視察してきました。
多くの展示を見ながら印象に残った展示をいくつか取り上げ、このブログを読んでいただいている方に、未来のライフスタイルの一旦をお伝えできればと思います。
ローフィエラ会場でのインテリアメーカーの出展を観ながら、今年のインテリアや空間デザインの潮流を見極めることはミラノサローネの醍醐味の一つではありますが、今回は市内で行われているインテリアメーカーやそれ以外の企業の出展について取り上げ、各展示の様子から未来のライフスタイルを読み解きたいと思います。
例年ミラノサローネは自動車メーカーや家電・IT等のエレクトロニクス企業が未来のライフスタイルや自社のブランドフィロソフィーなどを世界に向けて発信する場となっています。
今年も多くの企業がフォーリサローネでいろいろな展示を見せてくれました。
自動車関連では、毎年の常連LexusやAudiを始め、BMW、Citroen、Honda、Jaguar、Land Rover、Lamborghini、Maserati、Peugeot、トヨタ紡織が出展していました。
またエレクトロニクス関連企業は、Bang & Olufsen、Daikin、Dyson、Google、Grand Seiko、LG、Microsoft、Samsung Electronics、Siemens、Sony、Whirlpool、Yamahaが出展、そのほか日本からAGC、DNP、INAXなども出展していました。
あまり大々的に宣伝されていない出展や会期直前まで情報が出ておらず、ミラノに行ってから発覚する出展なども含めるとミラノの街全体でかなりの数の出展があり、全てを周ることは到底できない規模で賑わっています。
その中から私が観てきた中で印象的であり、今後のライフスタイルの行方に繋がる出展をいくつかピックアップしてご紹介します。
まず1つ目は、「Elle Décor Italy」の展示です。
ここ数年インテリア雑誌の「Elle Décor」は、IoTの文脈を踏まえて未来の生活を提示しています。
今年は“働く場”“”働く環境”に焦点を当てメッセージを発信していました。
そこで語られていたのは、何気ない生活のいかなる場所、いかなる時間でも、気が向いたら、あるいはパフォーマンスが上がった時に働らくといったライフスタイルの提示でした。
自然やグリーンに囲まれリラックスし、ストレスレスな環境に身を置く事で、ハイパフォーマンスを発揮できるという環境が提示されていました。
またリアルな接点とバーチャルな接点、いずれもを自由にオン/オフしながら生活する、そんな未来の働き方が提示されていました。
2つ目として、「Daikin」と「Yamaha」2つの展示を取り上げます。
この2つの展示はどちらも「空気や風」「音」といった見えないものを可視化しながら、人とそれら見えないものとの繋がりを再発見させてくれました。
「DaikinxNendo」では、2枚の偏光フィルムを使い、フィルムを通した光の当たり方により影の濃さを変えながら、まるでそこに風が吹いているかのように影が揺らめくインスタレーションでした。
とても幻想的な空間で、空気や風を視覚で感じるという新しい体験をすることができました。
一方「Yamaha」の展示は、“ノイズ”“サウンド”“ミュージック”それらを再解釈しながら、音との新しい関わり方を考えさせてくれる展示でした。
壁一面、絵画のような中にある実際に弾けるピアノの鍵盤。そこで音を奏でるヒトも絵画の一要素となりながら音楽との関わり方を提示していたり、筒を逆さにすると粒が落ち、雨音のような音を鳴らすアナログな楽器の展示。その1分続く音は、聞き手の気分次第でノイズにも心地よいリズムにも聞こえるといったものでした。
その他音が鳴っている楽器を抱え込むことで最も近い場所で音を感じる体験型インスタレーションや、街中の雑音を回転数を変えることで違うものにする展示など、音との関わり方の再解釈、新たなカタチを提示していました。
3つ目は「Cos」のインスタレーションを紹介します。
ファッションブランドCosは、建築家のMAMOU-MANIとのコラボレーションで、建築インスタレーションを発表しました。
16世紀に建てられたPalazzo Isimbardiで、21世紀の技術である3Dプリンターで出力されたバイオプラスチック製のモジュールパーツを使い表現することで、建築と自然の融合、近未来と古代とをブリッジするインスタレーションとなりました。
歴史と最新技術の対比により、建築の新しい時代を感じることができるインスタレーションでした。
4つ目は「Poltrona Frau」です。
本会場でも出展しているPoltrona Frauはミラノのショールームでも、本会場とは異なる展示をしていました。
“Connecting Experiences”と題して、上質かつ先進的なオフィス空間の提示と近未来における生活空間、生活様式の可能性を提示しました。
オフィス家具、オフィス空間の提示は、Poltrona Frauの限りなく高く、洗練された仕事で作られた家具を配置しながら、現代の仕事環境にマッチするデザインを提案していました。
近未来の生活空間、生活様式のプレゼンテーションは、コンセプトムービーと3Dプリンターで出力されたジオラマとで提示されていました。
最後に取り上げるのは「Google」です。
体験型のインスタレーションでは、今年1番の質の高い展示だったと感じました。
昨年初出展を果たし話題となったGoogleは、今年も注目度の高い展示となりました。
ギリギリまで情報を公開せず、しかしながら作りこみがしっかりとし丁寧な展示は、ミラノサローネに来ていた人たちでとても賑わっていました。
体験型の展示の為、1グループ10人ほどずつ会場に入り、入場してから出てくるまで30分ほどかかる内容ながら、3時間待ちの状態かつ15時ころには順番待ちの列も打ち切りとなる盛況ぶりでした。
Googl HomeやGoogleのVRヘッドセットで使われているファブリックで覆われたウェアラブルセンサーを手首に巻き、心拍や皮膚の温度などをセンサリングされながら、異なるインテリア、音楽、においで構成された3つの部屋で5分ずつ自由に過ごします。それぞれの人がどの部屋で最もリラックスしていたかを、最後に一人一人に対し、感情にリンクした色とりどりのリングのビジュアルに可視化しながら、提示してくれます。そしてカウンセリング内容をプリントし、個人の落ち着く色や素材、音楽、においなどを教えてくれるという内容でした。
待ち時間も含めこれだけ時間がかかる展示を見終わっても、ほとんどの人が体験できたことに満足していました。これだけの内容に仕上がっているのは流石だなと思うと同時に、人々がストレスレスな環境で生活したいと感じている現代社会において、それをきちんと見える化することがデザインの力であり、人々に求められている事であると感じました。
まだまだ印象的な展示は他にもたくさんありましたが、未来のライフスタイルや人々の価値観の行方を感じられる展示として5つ紹介しました。
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(写真・文責 兵頭)
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