概要と狙い
トリニティでは、研究職やエンジニアといった研究・開発部門の方々とイノベーション推進力を高めるコミュニティを運営しています。2023年度はNTTコミュニケーションズ 、NECソリューションイノベータ、島津製作所、マルホ、コーセーの5社が参加しました。
研究・開発部門は、製品やサービスの価値を作り出す源泉としての期待が寄せられ、それらの深い知見はますます必要とされています。その一方、従来の知見だけでは「価値」の花はなかなか咲かないとも言われています。
なぜなら、現在の研究・開発部門では「加工して製品にして販売する」というプロセスになじみがありません。そこには従来型のテクノロジーの専門性に加え、異なる文脈の考え方であるカルチュラルテクノロジー(文化技術)が必要となってくるからです。
TCラボでは、研究・開発部門の専門性とデザインの視点を融合させる新たなアプローチを用い、共創の形式でアイディア創出を行うこと、そして科学や技術と価値をひとつなぎに考えながら事業、研究、開発をリードできる人材の育成を目指しています。
アプローチ
TCラボ2023は、5社×2~4人、合計18人が参加。NTTコミュニケーションズのコラボレーション施設(神保町、東京)において、半日のリアルワークショップを3回実施。具体的には以下のような内容。
■Day1
1ーオープンイノベーションの基本と課題を概観し、これからの在り方を学習。
・新規事業の目標と時間軸による分類
・戦略構築の方法
・オープンイノベーションの潮流と協創モデル
・オープンイノベーションの阻害要因
・オープンイノベーションのこれから
・大企業同士でのオープンイノベーション
・事例紹介
2ー現在自社が保有している技術やリソースについて、他社の視点で「価値」をリフレーミング。
・自己紹介
・過去のプロジェクト紹介
・リフレーミング
■Day2
3ーエフェクチュエーションの原則から、事業を起こす思考プロセスと行動パターンを学習。
・エフェクチュエーション 5つの原則
・コーゼーションとの違いと関係性
・エフェクチュエーションの実践
・オープン・クローズ戦略
・事例紹介
4ー異業種の企業とともにコラボレーションアイディアを発想。
・アセットの整理
・ペアワークによるアイディア発想 ×3回
・チームワークによるアイディア発想
■Day3
5ー失敗の意味とそれへの態度を学習。
・Fail fast
・破壊的思考とは
・新規事業がうまくいかない理由
・事例紹介
6ー発想したアイディアに対しての建設的批判と再構築を経て再設計の実践。
・批判的意見の収集
・再検討
・プレゼンテーション
アウトプット
・2社間コラボアイディア
Day2の異業種企業のコラボレーションとして、ウェルビーイングを初期条件としてペアワークでアイディア創出、ペアワークの組み合わせを3回変更し、合計207件のアイディアを創出。
・最終アウトプット
Day3の破壊ブレストの成果として、ウェルビーイング事業のアイディアを4件創出。
参加者からのコメント
・競合他社や同業でない方が参加されており、アイデア出しやコミュニケーションにおいて心理的安全性が担保されていたので、とても良かったです(島津製作所)。
・スマートに仕事をこなそうとしていましたが、アホなことを言ってみる、批判を受けるというトレーニングのおかげで、そんなに構えてスマートにやらず、まずはやってみる、失敗を糧としてやっていく面白さを実感できました(コーセー)。
・知識と人とのつながりという次につながるものを頂けたので、今後具体的に新しいアイデアや協業につなげていきたいと思います。本当に素晴らしい経験をさせていただきました!会社でもぜひこの手法を広めて、社員にも伝えていきたいと思います!(マルホ)
成果
研究・開発部門に所属している研究職やエンジニアならではの、深い知識や洞察力に加え、異なる分野の専門家との共創による新たな視点の獲得、そしてデザインのアプローチが加わることによるアイディア創出の体験は、実務に直接応用できる、実践的なそして新鮮な学びとなりました。そして、参加者同士で深め合ったつながりは、次のコラボレーションへの土壌へと育つつあります。
担当者の感想
私自身も感性工学というデザインと工学、医学の複合領域の研究の出身です。
「デザイン」は文化技術の一種であるといえ、ひとや社会に対し価値のあるものを創り、提供する役割を担います。
科学・技術の専門性を持つ人材は深い知識や分析的視点がある一方、創造的で広く新しい繋がりを創る経験を得る機会そのものが少ないのも現実です。
しかし、一方で、考えること、知ることがとことん好きで、新しいチャレンジに向かうマインドもすでに持ち合わせている人材であることに目を向ける必要があります。
このような人材がオープンにつながり新しい視点を得て、デザインのアプローチをアドオンして自在に使いこなし、継続的にアイディアを産みだし続けられる仕組みを作ることは、これからの創造的な組織のキーであると考えられます。
新たなチャレンジを担いたい方のご参加をお待ちしています。
(中森志穂)
チーム体制
中森志穂(デザインリサーチャー)
小林誠(座学講師 株式会社シクロ・ハイジア)
主体的に『考え・行動』する、
自律型の人と組織をつくり、人的資本経営を支援します。
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