今年も日本人研究者がノーベル賞を受賞しました。
受賞された先生方の穏やかなコメントを聞くと、研究者としての純粋な情熱と探究心が伝わってきて心が洗われます。
未来を変える革新的な新技術
京都大学の北川進博士は、「金属有機構造体(MOF)」の研究でノーベル化学賞を受賞されました。
この多孔性材料は、内部にナノサイズの無数の孔が配列した金属化合物で、気体の出し入れが可能だそうです。
CO2などの地球温暖化ガスや、PFAS(有機フッ素化合物)などの有害物質を捕捉できることから、
持続可能で安全な地球環境の実現に大きく寄与する、私たちの暮らしに直結する画期的な発明なのですね。
企業にも眠る「シーズ(SEEDS)」という宝
こうした技術革新は大学だけでなく、企業でも日々生まれています。
研究・開発段階ではまだ用途が明確でなくても、やがて社会を変える可能性を秘めている。
そうした技術やノウハウは、マーケティングの世界では「SEEDS(シーズ)」= “種”と呼ばれます。
しかし、どんなに優れたシーズも、「NEEDS(ニーズ)」= 顧客や社会の必要と結びつかなければ芽を出せません。
苦労して生み出した技術を眠らせてしまうのは、まさに“宝の持ち腐れ”です。
最近では「永眠特許」という言葉まで聞かれるようになりました。
偶然から生まれたシーズ起点のヒット商品
すっかり浸透したデザイン思考は、ユーザーの「ニーズ起点」で解決策を導き出す発想法です。
それに対し、企業の「シーズ起点」で発想した成功例も存在します。
米国の3M(スリーエム)の「ポストイット」の誕生秘話は、ご存知の方も多いと思います。
強力な接着剤の研究開発過程で、偶然できてしまった「弱粘着剤」から生まれました。
別の研究員が後に「栞が本から落ちないようにできないか」と考え、この “剥がせる接着剤” を
栞に応用するアイデアを思い付いたのです。
公式サイトには、その接着剤の開発当事者である研究員が、
使い道を探し、様々な部門の人たちに紹介して回っていたことが書かれています。
仲間へのインプットが奏功したわけですね。情報共有が実を結んだ好例とも言えます。
“ニーズ”と”シーズ”が偶然合致するケースも
任天堂の「リングフィットアドベンチャー」は、“運動不足を解消したいが、
運動は嫌いなので楽しくできたらいい” という企画者の個人的な願望から実現したそうです。
公式サイトの開発ストーリーによると、
企画制作部のプロデューサー河本氏は、「ゲームをしていたら、いつの間にか運動してしまっていた」
というようなゲームが欲しくなり、RPGが適していると考え、数名と試作品を作り始めた。
当初は、WiiのようにJoy-Conのみで操作するゲームだった。
それからしばらく経ち、様々なコントローラーの研究・試作を行っているハードウェア開発部から
「直感的に遊べる“力を使ったコントローラー”で“リング型”のものがある」と紹介される。
具体的な使い方は定まっておらず、操作に力を使うのは面倒に思われそうだと感じていた。
その技術製品が、河本氏の求めるものに合致し、製品開発が進められた。
任天堂公式サイト「開発者に聞く『リングフィットアドベンチャー』」
の内容から要点を抽出し、筆者が要約化
という、劇的な出会いから生まれたそうです。
これは、ニーズ(運動不足解消、運動は嫌い)と、ウォンツ(遊んでいていつの間にか運動しているゲーム)と、
シーズ(力を使い直観的に操作するコントローラーの技術)が見事にマッチングしたケースと言えます。
ニーズ・ウォンツ・シーズの関係性(筆者作図)
リングフィットアドベンチャーの場合(筆者作図)
シーズ(技術やノウハウ)とニーズ(顧客の必要)を効果的に結び付けるには、
その真ん中に置かれる「ウォンツ(顧客の具体的な手段への欲求)」を思い付くことが肝心です。
リングフィットアドベンチャーは、ニーズ起点で商品像をイメージし、
幸運にもそれを具現化できるシーズと出会えたケースでした。
一方で、純粋にシーズ起点で発想する場合は、
まずその技術でできることの棚卸しから始める必要があります。
なぜなら具象的なシーズの用途を見出すのに、ニーズは抽象的過ぎるからです。
技術で「何ができるのか」を明確にし、それをもとに商品像を描くことで、
初めて対応するニーズが見えてきます。
偶然を “必然” に変えるには?
ポスト・イットやリングフィットアドベンチャーのような事例は、
セレンディピティ(偶然の幸運)にも見えます。
ですが、これら2つの例においても偶然ではないことがあります。
それは、「情報共有」です。
剥がせる接着剤の生みの親である研究者が、用途を探して触れ回っていなければ、
閃きに出会うこともなかったでしょう。
また、「部門間連携」が取れる風通しの良い環境であることも重要です。
• 技術の存在を多くの人が知る機会
• それぞれの専門性を活かし、知恵を出し合う機会
• アイデアを検証し、磨いていく機会
こうした場があれば、埋もれた技術を“偶然”ではなく“必然”として花開かせることができます。
つまり、組織内の知恵の総和こそが、シーズを咲かせる土壌なのです。
デザイン思考を応用したトリニティの「シーズ起点の発想法」
企業の大事な資産(知的財産)を活かし、新しい顧客価値や市場を創る。
私たちトリニティ株式会社では、そのための実践的なメソッドを開発しました。
◉ シーズ起点のデザイン思考 研修型実践プログラム
2020年から実施しているこのワークショップでは、
企業が自社技術を顧客価値へと転換するアイデア創出をサポートしています。
デンソー コアスキル開発部と共に、現場の開発者の声を拾いながら設計しました。
ユーザーが「欲しい」と思うものを先回りして具現化するニーズ起点の「デザイン思考」と、
技術用途を開拓する「シーズ起点の発想」を融合させたオリジナルプログラムです。
こんな課題をお持ちの企業に最適です。
• 技術を横展開して新製品・新事業を作りたい
• 開発がユーザー不在のまま進んでしまい、収益化が見込めない
• 優れた素材・技術の活用先が見つからない
さらに、ポテンシャルが高いのにもかかわらず、決定打が見つからずリソースのままでいる、或いは活用法を提案したがコンセプトレベルに留まっている、といった状態の「知的財産」を有効化するプログラムもご提供しております。
◉「デザイン✕知財✕新規事業」プログラム
知財や無形資産を切り口に経営・事業戦略を支援するコンサルティングファーム、
株式会社シクロハイジアとの共同運営による本プログラムでは、
デザイン思考によるアイデア創出にとどまらず、
社会実装を見据えたビジネスモデル化までを一貫して支援しています。
企業が保有する知的財産を、単なる“リソース”としてではなく、
新たな事業価値へと転換することを目指しています。
弊社が提供するプログラムは、定型ではなく、クライアントごとに最適化・改善を重ねています。
みなさんの会社にも、まだ可能性を秘めた “種” が眠っていませんか?
その種を丁寧に育て、社会に花を咲かせる――
私たちは、そのお手伝いを全力でさせていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
文:トリニティ株式会社・篠﨑美絵
この記事をお読みになりご関心をお持ちの方へ。
トリニティでは、組織のR&Dや知財部を中心に、自社技術を実用化するための
アイデア創出プログラムをご提供しております。
ご興味のある企業・団体の方は、ぜひお問い合わせフォームよりご相談ください。
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