富山県では、経済・文化長期ビジョンの元、「アート・デザイン県」とやまを創出するため、県総合デザインセンターを拠点に様々なプログラムを展開しています。令和3年度には、デザインビジネススクール本格開校を予定しており、本年度はその基盤づくりを実施。
トリニティはこの事業*に採択され、事業の全体設計、講座内容、ファシリテーションを担うこととなり、先日第一回目が行われました。
* プレスリリース「とやまデザインビジネススクールを開講します!デザイン経営を学び・企業の競争力の向上へ!」(2020年09月02日 富山県庁)
プログラム:「デザイン経営」の視点を学び「経営デザインシート」「デザイン思考」を実践する希少な機会
第1回目、第2回目には官民のトップ、そして企業のデザイン経営実践者など、第一線で活躍する有識者による基調講演、それをベースとして、3回目には経営デザインシートをグループワークで作成。その後は2日間かけてデザイン思考を体得します。
後半のワークショップでは、欠かすことのできない未来志向、未来の姿をイメージするため、トリニティのグローバルトレンド(=未来を構想するバックキャストのための情報分析レポート)のインプットなども盛り込まれてます。
実施期間 2020年9月~~2021年1月
実施回数 計5回実施((半日講演会2回+終日ワークショップ3回))
実施場所 富山総合デザインセンターおよび富山県民会館
参加者人数 20名限定
参加者構成 企業経営者・マネジメント層、参加各社の組織内デザイン担当者・企画担当者等
キックオフ・基調講演「価値をデザインするー今私達がすべき経営のイノベーション」
第1回目のテーマは「価値をデザインするー今私達がすべき経営のイノベーション」と題して下記のお二人に登壇頂きました。
基調講演 1 住田孝之氏
最初の登壇者である住友商事顧問の住田孝之氏は「日本企業が価値をデザインすることの重要性」を説く第一人者。昨年まで知的財産戦略推進事務局長として、デザイン経営を推奨し、経営と現場、デザイナーが共に未来を創る「経営デザインシート」を押し進めていた方でもあります。
日本がなぜ「価値をデザインする」ことが急務なのかをグローバルな視点と日本市場経済の変化と合わせてわかりやすく説いて頂きました。
需要がリードする時代は終わり供給過多である現在は、従来の延長ではなく、新しい価値観にむけて別のアプローチを実践することが急務。時には人にも製品にも平均的な質の高さではなく個性ある異を認めて、ブレイクスルーして価値を作り出すことも大切と。
そのアプローチの重要な要素に「デザイン」があり、デザイン思考が大いに活用できると語っています。
また最後の10分を使って、経営デザインシートを実際に皆で記入しました。このミニワークでこれまでの過去の整理の仕方が分かると同時に未来を描くことの難しさもまた、体感しました。
住友商事株式会社 顧問
住田 孝之 氏 略歴
東京大学法学部卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省。91 年からジョージタウン大学国際政治大学院。 特許庁、環境庁(当時)、経済連携交渉官、知的財産政策室長、技術振興課長、日本機械輸出組合ブラッセル事 務所所長、資源燃料部長、商務流通保安審議官を経て内閣府知的財産戦略推進事務局長に就任。「クールジャパン」 を含む知的財産に関する戦略の責任者を務め、更に日本の企業が新たな価値を生み日本の経済を活性させるための「デザイン経営」や「経営デザインシート」といった新しい概念の創出とそのツールを作成推進。啓蒙・ 普及を自ら行い、行政に新たな風を吹き込む。2019年住友商事顧問就任。WICI(世界知的資本イニシアティブ) 会長。IIRC( 国際統合報告評議会 ) カウンシルメンバー。一般社団法人 FCAJ(Future Center Alliance Japan) 理事。
基調講演 2 福市得雄氏
続いて福市得雄氏は、トヨタ自動車レクサスインターナショナルの社長の経験をもつ、生粋のデザイナー。
組織の中でのデザインの活かし方を実践し、時に悩み、模索した経験を吐露。外部からは計り知れないそのご苦労に、参加者も引き込まれました。
また経営者とデザイナーが対話する際には、お互いに「わかりやすく理解しあう努力をすること」。専門用語を使ったり抽象的な言葉を使うことはかえって距離をつ くってしまう。とにかく「わかりやすく&やさしい言葉で」語ろうと。
また、同じワーキングメンバーの仲間でも世代や価値観が異なれば、たとえ同じ形容詞「エレガント」「スポーティ」などの言葉でも個々では違うイメージや意味をもっている。それを前提に丁寧にコミュニケーションをすることも大切であると説かれます。
常日頃、同氏が経営陣や組織内のメンバーたちに言ってきたこと、それは「デザインには企(わけ)があり、スタイルには意味がある」という言葉。日本はデザインというと見た目だけの意匠設計を思い浮かべてしまいがちですが、デザイン活動の中には理由、くわだて、必然性があること。そして意味、つまり戦略とそこから導き出される価値がある、、と理解できるまさに同氏の名言だと思います。
デザインコンサルタント
福市 得雄 氏 略歴
カーデザイナー。多摩美術大学を卒業後 1974 年にトヨタ自動車に入社。欧州拠点及び関東自動車工業(現:ト ヨタ自動車東日本)などの関連会社でもマネジメントを担う。2011 年常務役員、デザイン本部長に就任。トヨタ/レクサスのデザイン開発に携わる一方、チーフブランディングオフィサーとして、トヨタのデ ザイン改革やレクサスのブランド確立を牽引。 2014 年よりトヨタ自動車㈱レクサスインターナショナル社長として経営とデザインを担う。 2016 年先進技術開発カンパニー先行デザイン担当。2018 年エグゼクティブアドバイザーに就任。現在はデザインコンサルタントとして多摩美術大学で客員教授を務める他、産業界に貢献している。
「デザインビジネススクール」の施策の工夫
施策ポイント1:なぜ、デザイン経営が大切なのか~を経営者・マネジメント層に「腹おち」させる
巷には、ここ数年来「デザイン経営」や経営とデザインの融合が解かれた書物やイベントが散見されますが、未だこの視点やアプローチが、経営者に理解され実行に移され成果を上げている事例は多くありません。よって今回のスクールが単なる学習の場になるのではなく、受講者が行動変容出来るように、登壇者には、政策と企業でのプラクティター(実践者)からキャスティングを行い、参加者が次の一歩をイメージし、具体的に動ける支援をします。
施策ポイント2:座学だけでなく、企業の経営陣もデザイナーと一緒にワークして「体現」する
プログラムの中では、経営デザインシート、デザイン思考、未来構想フォトランゲージ等の今、最も注目されるメソッドを活用。これらのメソッドを知り、活用できるようになると、各企業内での会議や対話の質が上がり、アウトプットも変わっていくでしょう。
後半は、これらを活用して、経営者層とデザイナーがひとつのグループになって、楽しくワークを進めていきます。
施策ポイント3:トリニティならではの情報インプットによる視野の拡大
With/afterコロナで、世界や国内の市場や生活者の価値観も大きく変化しています。製品・サービス開発、事業開発の場面では、既存の情報の延長ではなく未来を構想するための補完情報が求められます。
トリニティが2000年から作成しているクロスオーバートレンドは、プロダクト&建築&ファッションをクロス・横断させて、未来の価値観とそこから生まれる製品やサービスを定点観測的に調査分析したレポートです。 プログラムの中ではこれを活用して、限られた時間でも参加者の皆さんが高いパフォーマンスを出せるよう工夫しています。
とやまデザインビジネススクールについて
本年度の同スクールは下記のように実施されます。
□オープンセミナー(無料)
・「企業の価値をデザインする ー 今 私達がやるべき経営のイノベーション」 2020年9月4日
・「デザイン経営と未来価値創造ツール ”経営デザインシート”の実践」 2020年9月16日
□デザイン経営メソッド・企業導入ワークショップ(3回合計で3万円/1名)
・「デザイン経営を知り・企業の強みとその未来を考える」 2020 年11月12日
・「新しい価値を生みだすデザイン思考(基礎編)」 2020年12月16日
・「新しい価値を生みだすデザイン思考(応用編)」 2021年1月21日
案内資料:とやまデザインビジネススクールを開講します!(富山県総合デザインセンター)
事務局・申込先:富山県総合デザインセンター(E-mail:dc5@toyamadesign.jp TEL0766-62-0510
企画・実施運営:トリニティ株式会社
このとやまビジネスデザインスクールは富山県在住の企業や個人が対象ですが
ご興味のある方は、こちらからお問合せください。
大きな時代の変化に対応するための「デザイン経営」
「デザイン経営」は、イノベーションやブランド構築をはじめとする企業の価値向上を「デザイン」を活用して実現していく経営手法です。
ここで意味する「デザイン」は、企業が大切にする価値と意志を表現する活動であり、同時に顧客や生活者の潜在的なニーズやインサイトを元に事業化を構想する活動までを指しています。(これを昨今は広義のデザインと称します。)その活動のために、デザイン思考やアート思考を活用した対話、思考、実践の場が重要です。
デザイン経営は、組織の規模や成熟度にかかわらず、未だ十分には浸透はしていませんが、経営環境が著しく変化している今、一企業の競争戦略にとどまらず、社会や環境とどうかかわっていくか、モノやサービスがあふれる市場で「ひと」を幸せにすることは何か、自分達は未来に向けてどんな価値を創り上げたいか、を考えることは、経営やマネジメントの欠かせない視点になっています。
そしてこれを考えるとき、未来を構想する力、生活者の心や感情の中に共感するというデザインの力がとても重要なファクターになってきます。
トリニティでは、1997年に活動を始めた当初から、広義のデザインの視点で活動を続けてきました。
もちろん当時「広義のデザイン」という言葉はありませんでしたが、私たちは「デザインには、生活者と企業経営をつなぐ力がある!」と信じて、生活者×経営×デザインの三位一体のトリニティという社名でスタートしました。
「デザイン経営」の意義がますます高まる今、経営者サイドからの「デザインの力」―デザインチームへの期待や役割も高まっており、これに応え、起動するタイミングであると思っています。
デザイン経営に関するお問合せはこちらから
トリニティは、デザインの力を通して、ユーザーの深層心理と企業のデザイン・戦略を結び、企業のイノベーションに伴走する企業です。創業以来、デザイン経営の様々な側面を、デザインリサーチ、未来予測、人材育成のワークショップなどを通じてサポートしています。
・これからデザイン経営を本格化したい
・デザインの力でイノベーションをおこしたい
などデザイン経営についてのご相談はこちらからご連絡ください。
文責
湯浅保有美
トリニティ株式会社 CEO 代表取締役社長
エイチタス株式会社 取締役 / デザインプロデューサー
ソーシャルケア デザイン
– ソーシャルプロデューサー
– グラフィックファシリテーター
– LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ
RobiZy 正会員(特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構)
一般社団法人日本知財学会 正会員
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