トリニティ株式会社

グローバルリサーチTips:海外市場を攻略する為のデザイン嗜好の理解は文脈の理解から

公開:2019年11月25日 更新:2019年11月25日

こんにちは。
トリニティ株式会社 取締役の深澤です。

 

トリニティでは、さまざまなプロジェクトを通じて、
海外でデザインリサーチを行う機会がありますが、
今回はデザイン嗜好に関するお話しです。


海外でのデザイン嗜好

そもそも日本国内においても、デザイン嗜好を一括りで理解することは困難ですが、
海外においては、宗教観や文化的背景、日常的な慣習等が、日本と大きく異なる国や地域も多く、
デザイン嗜好を理解する上でも、その国の文脈を理解しなければ、深い理解に結びつかいないことが数多くあります。

〇シンプルなものが好き、は本当?

様々なタイプのデザインリサーチを行う中で、シンプルというキーワードは、
最も登場する言葉の一つかもしれません。そして『シンプルなデザインが良い』、
という反応は、消費者に直接的に聞けば、間違いなく出てくる反応ではないでしょうか?

さて、ここで『シンプルなデザインが良い』と答えた消費者の多くが、
我々、日本人が思うようなシンプルなものを欲しいと思い、実際に購入するのでしょうか?
もし、そのリサーチがもしアジアの新興国で行われたとしたら、その答えは『否』ということになる可能性が高いと思います。

〇シンプルなデザインはセンスがいい人が選ぶもの

デザイナーとして活躍する人の多くは、高校時代から美術予備校に通い、美大に進学するなど、ある程度早い段階から職人のようにその道を極める人が多いかもしれません。けれども秋山氏がデザイナーになったのは、社会人になってだいぶ時間が経ったころ。デザインのみならずモバイルコミュニケーション、インターネット、プログラミングなど、それまでの経験した領域を横断し、多数の分野の知識を掛け合わせる事で、一つの道だけを極めるのとはまた違う形で力を発揮し、活躍しています。

—–過去の経験の中に、未来へのヒントが

理由はそれほど複雑ではありません。
例えば、タイやインドネシアといった国では『シンプルなデザインが良い』と答えることが、
ある種、自分自身はセンスのいい人間である、というメッセージの発信につながります。

 

つまり、『シンプルなデザインはセンスのいい人が選ぶもの』という認識があり、
さらに、自分自身を良く見せたいという思いが、
(自分の好みを超えて)出てきてしまった結果としての『シンプルなデザインが良い』、ということなのです。

<参考>
SIMPL:タイの女性デザイナー2人が立ち上げた時計ブランド。
クリーンでモダン、ミニマムなデザインは、「まさにセンスの良さ」を感じさせる。
タイのオリジナルブランドとして、こういったモダンな製品が登場していることも重要な変化。<a

出典:Simpl Watch – Minimalissimo https://minimalissimo.com/simpl-watch/
   designed by Tanachpak Warrnissorn & Alisa Kittipong

〇シンプルの認識が違う

もうひとつ気を付けなければいけないのが、
日本と海外におけるシンプル(言葉)に対する認識の違いです。

 

海外でのインタビューで、『シンプルで素敵だと思って選びました』と言って見せてくれた家電製品が、我々日本人からしてみると一風変わった装飾が施され、野暮ったく見えてしまうことは、
珍しいことではありません。

 

ここで大事なのは、シンプル(言葉)に対する認識が自分達とは異なるという観点を踏まえた上で、その理由を探っていくことです。『彼らの好むシンプルなデザイン』の特徴を掘り下げつつ、その背景にある、その国、固有のデザイン嗜好を理解することが重要となります。

〇デザイン嗜好を理解する為のデザインリサーチとは?

当然、言葉に対する理解の相違は、その他の言葉(例:高級感、高性能)でも起こります。加えて、世代や性別、収入や居住地域における差異、その国における発展の時間軸も、デザイン嗜好を左右する因子となるでしょう。

 

あまり単純化して理解することは危険ですが、
ディテールを追いかけ過ぎても全体像がぼやけてしまいます。
その国、固有のデザイン嗜好をひも解きながら、ある程度、構造的に理解することがポイントとなります。

 

さて、上記のような観点から、デザイン嗜好を理解するには、
デザインリサーチを複合的に活用することが求められます。

 

ユーザーインタビュー、エキスパートインタビュー、エスノグラフィ、ウェブサーベイ…。
様々なリサーチツールがあり、特殊なメソッドもありますが、
重要となるのは、その使い方や順序、掛け合わせです。

 

とかく、新しいツールやメソッドに興味が向かいがちですが、
”目的に合わせたデザイン嗜好の理解”のためには、
実は、リサーチツールやメソッドの使い方や掛け合わせにおける、
ちょっとした工夫とアイディアが必要となります。

文責

文責:深澤秀彦
トリニティ株式会社 取締役

大手日系グローバル自動車メーカーのコンサルティング/デザインリサーチ会社でキャリアをスタート。
トリニティでは、グローバルでのデザインリサーチを中心に、
デザイン戦略/デザインマネジメントの構築、デザインコンセプト、デザインモデルの開発等、
リサーチから製品開発、戦略立案まで幅広いプロジェクトを担当。
欧米を中心に、南米やアジア、中東、アフリカ地域などを様々な地域を対象に、
現地フィールドワークを含む海外でのプロジェクトを多く推進している。
また、国内外のデザイナー、デザインリサーチャー、エンジニアといった、
多種多様なエキスパートとの共創経験も豊富で、プロジェクトのテーマや課題に応じてチームを編成し、指揮している。

新興国デザイン調査

急速な経済成長による同一性と、文化・慣習による差異を見極める。

変化の激しい新興国では、対象エリアの地域性に加えてグローバルな動向にも目を向ける必要があります。
トリニティは中国、インド、ブラジル、ロシア、ミャンマー等、クライアントの海外進出を支援しています。
精度の高い調査ときめ細かなフォローによって、対象エリアの正確な「事実」を知り、今後の「戦略」を策定することが可能です。

調査例

・インド中間層の価値観を探る
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