トリニティ株式会社

ソーシャルワーカーの仕事を知る ~第4回福祉×デザインアイデアソン~

公開:2014年12月29日 更新:2014年12月29日

福祉・介護の現場で働く方を毎回ゲストに招き、現場の悩みや問題など赤裸々に語って頂く「話題提供」と、そこから得た気づきをもとに参加者全員で課題解決アイデアの創出に挑む「ワークショップ」とを組み合わせた、「福祉アイデアソン」も、今回で4回目となった。

11/21に開催された第4回福祉×デザインアイデアソンでは、話題提供者としてソーシャルワーカーをつとめる網代祐介さんをお招きした。網代さんが勤務するのは、皆さんもご存知の、あの「亀田メディカルセンター」。南房総というロケーション、医療業界の常識を覆す施策の数々で常に話題に事欠かない医療機関でのお話が聞けるとあって、参加者も皆興味津々。

亀田メディカルセンターのソーシャルメディカルワーカー網代祐介さん。
「2025年まであと10年!ソーシャルワーカーから見た在宅介護現場の課題」
というお題でシビアな問題についても率直にお話頂いた。

当日は、自動車関係、エレクトロニクス関係のデザイナー、商品企画の方などが多数ご参加。アイデアソンの冒頭、まずは網代さんから現場でのエピソードを色々語って頂いたので、今回、そのお話の要旨をここに掲載したいと思う。

ソーシャルワーカーの仕事は、入院患者さんの”その後”にまつわる仕事がほとんどだ。
退院して元に生活に戻れる方ではなく、退院してももう入院前の生活に戻れない、といった方に必要な支援策を示し、退院支援を行う業務が9割を占めるという。

その「支援」内容は実に様々で、認知症を発症している方の今後の財産管理をどうするか、誤った認識から病院側の受け入れが困難になっているHIV感染者をどうするか、親族の介護疲れをどう防ぐか等、時に患者さんの勤める職場との調整から、社会復帰支援、受診支援、治療選択、そして経済的問題、家庭の問題までに及ぶ。

これほどの激務だが、網代さんの現場ではソーシャルワーカーの割合はおおよそ50床に1人。もっとも、一般的には200床に1人さえ確保するのが困難な状況だそうだ。
一方で、ソーシャルワーカーの仕事の重要性は今後一層、高まりつつある。

それは高齢化と出生率の低下による人口減少により、2025年には東京だけでも20,000床以上のベッドが不足し、救急車がたらい回し…という日がすぐそこまで迫ってきているからだ。医療費の枯渇による保険制度の崩壊の予兆とも相まって、ますます在宅介護の重要性は高まっている。

そんな過酷な現場から、唯一救いのあるエピソードもご披露頂いた。
80代のある難病末期の患者さんのケースだが、既に余命いくばくもない…という状態だった。その患者さんの強い想いは「最期は自宅で迎えたい」というもの。
そして、ご家族もなんとかしてその願いを叶えてあげたいと考えていた。そこで病院側がご家族を全面的にバックアップする形で、患者さんを退院させようということになった。自宅でご家族が面倒をみられるように、病院側ではそのご家族に個別にレクチャーを行うなど、在宅での介護体制を整え患者さんは退院。二週間という時間を自宅でご家族と共に過ごされ、そのまま看取られたそうだ。
ソーシャルワーカーを中心としたチームワークのおかげで患者さんご本人、そしてご家族の思いを叶えることができた…というケース。

ソーシャルワーカーに期待されている役割とは、時に人生の結末までを見据えた、本当のクオリティ・オブ・ライフを実現することと網代さんは言い切る。

網代さんのエピソードの後は、「逆ブレスト」の参加者のワーク。あえて福祉の現場に「マイナス」に作用するサービスのアイデアを考えてみて、それを逆転させてみるというもの。発想の転換につながるので、思いがけないアイデアが出ることも。

あえてマイナスから考える「逆ブレスト」。
ワークショップでは、楽しんでもらうための仕掛けが色々。

ここで出たアイデアを基に2人1組で1セット4分、意見交換を行う「スピードストーミング」。参加メンバーで気付きを共有し合う。

 

これを5セット繰り返したのち、最終的に自分のアイデアをシートに書き出していき、皆で更に共有。

アイデアシートの数々。現場の生の声を共有した後は短時間でもこれだけのアイデアが出揃う。

市場の変容により、福祉や介護の問題に取り組み始める組織や担当者は多いが、現場の経験が十分でないためにリアリティをもってワークに臨めない、という現実があるのではないだろうか。
そんな方にこそ現場の”生”の声を聞き、そこから”発想”する福祉×デザイン・アイデアソンを体感してほしいとと思う。

来年も引続き複数回の実施を予定。
詳細は決まり次第、またこちらのブログに掲載するので、ぜひ次回のご参加を!
募集は定員になり次第、締め切らせて頂きます。

お問い合わせはトリニティ・セミナー運営事務局まで