トリニティ株式会社

ブラジル大統領選から見る、新興国のエネルギー

公開:2014年12月10日 更新:2014年12月10日

2014年10月26日、ブラジルでは大統領選挙(決選投票)が行われた。
結果、現職のジルマ・ルセフ大統領が、最大野党である社会民主党党首のアエシオ・ネーベス氏を僅差で破り再選した。
ちなみに、ジルマ氏はブラジル史上初めての女性大統領でもある。

この大統領選選挙の前後、ちょうどサンパウロに滞在していたのだが、
現地で働く日本人のメディア関係者から、社会民主党時代の経済的不安定さを考えると、今の方がまし、ということでジルマ氏が再選するのでは、と聞かされていたのだがその通りの結果となった。

ただ、私が興味を持ったのはブラジル国民の選挙に対する関心の高さである。
選挙の前日には、多くの人が支援する候補者を鼓舞するがごとく、
候補者のシールを張って街を歩いているのだが、これには驚いた。

サンパウロ市内の本屋にいた背中にアエシオ氏支持のシールを張ったカップル

同じ本屋にいた女性。こちらもアエシオ氏支持のシールを張っている

サンパウロ市内の道路に落ちていた、ジルマ氏を支持するシール。
LGBT(セクシャル・マイノリティ)コミュニティであることを示すレインボーパターン

これ以外でも、候補者の旗を掲げて走る自動車に対し、
同じ候補者を支援する人が、拍手を送るという風景も目にした。

なぜブラジルでは選挙に対してこのような熱気があるのだろうか?

そもそもブラジルでは義務投票制が採用されており、
理由なく棄権すると罰金・罰則がある与えられ、
その罰則自体もパスポートがやビザが取れなくなったりと、
社会生活上、大きな影響があるものとなっている。

日本ではなじみの薄い義務投票制だが、
どうやら、世界的にはオーストラリアやシンガポール、ベルギー等、
一定数の国と地域で採用されているようだ。

もちろん義務投票制自体、賛否両論あり、
任意投票制と比較して優劣をつけることは難しい。
義務だから致し方ない、という態度の人々もいるだろう。

ただ、自国の未来を占う選挙に対し、
高い関心を持ち、積極的に参加している大勢の人々を見ていると、
なんだか、大きなエネルギーと共に国自体が動いているように感じられ、
少し羨ましく思えたのである。

2016年には、ブラジル第2の都市であるリオデジャネイロで
オリンピックが開催され、2020年には東京でオリンピックが開催される。

出来れば、今の東京にはちょっと不釣り合いぐらいのエネルギーをリオから受けとり、2020年の東京を大きく変化させるきっかけを、皆様と一緒に創っていきたいものである。

文責

深澤秀彦

トリニティ株式会社 取締役

大手日系グローバル自動車メーカーのコンサルティング/デザインリサーチ会社でキャリアをスタート。
トリニティでは、グローバルでのデザインリサーチを中心に、
デザイン戦略/デザインマネジメントの構築、デザインコンセプト、デザインモデルの開発等、
リサーチから製品開発、戦略立案まで幅広いプロジェクトを担当。
欧米を中心に、南米やアジア、中東、アフリカ地域などを様々な地域を対象に、
現地フィールドワークを含む海外でのプロジェクトを多く推進している。
また、国内外のデザイナー、デザインリサーチャー、エンジニアといった、
多種多様なエキスパートとの共創経験も豊富で、プロジェクトのテーマや課題に応じてチームを編成し、指揮している。