ベトナムのバイクファッション
公開:2013年12月6日 更新:2013年12月6日
経済発展過程にある国において、自動車に先んじてバイクが広く一般に普及するというのはよく見られる事象であるが、ベトナムにおいてもそれは当てはまる。ここ数年で道路を走る自動車の数は飛躍的に増えたそうだが、それでも主役の座はまだまだバイクにある。
そして、バイク事情にもお国柄が表れる。今回は、バイクを通じて見たベトナムについて語ろうと思う。(とは言え、筆者はバイクは素人)
筆者が実際に見てきた、あるいはトリニティのリサーチャーが見て(そして撮って)きた新興国のバイク事情と比べて、ベトナムには以下のような特徴があると思う。ちなみに筆者が訪問したのはホーチミン市である。
1. スクーター比率の高さ
他のアジア諸国に比べて、スクーター比率が高いように思う。理由としては都市の規模(走行距離の違い)、道路事情(舗装具合)、実用本位度(自己表現の一部か、単なる足か)といったところであろうか。
筆者の見た限りでは、ホーチミン市街地の道路の舗装状況は悪くなく、アップダウンもない。また、面積的にはそれほど大きくない。皆、ちょっとした距離の移動に使う足としてスクーターを使っているのだろうとばかり思っていたのだが、通訳をつとめてくれたホーチミン市国家大学に通うメジロさんは、毎週末数十キロ離れた実家にスクーターで帰っているそうだ。日本だと「よくそんな距離スクーターで通うね」と言われてしまうところだが、当の本人にとっては隣町へ行くような感覚のようだ。さすがにお尻は痛くなると言っていたが。
2. 多彩なヘルメット
ホーチミン市のバイク乗りが見た目で自己主張するとしたら、ヘルメットはマストアイテムであろう。そう思えるほど、ヘルメットの種類が多彩である。ただ、多彩と言っても、見た目にはハーフタイプが100%近いシェアを占めている。フルフェイスは滞在中一度も見かける事が無かったし、シールド付きのタイプも皆無ではないが、見た記憶がないほど少ない。
先述したように、チョイ乗りが多いと思った理由の一つは、ヘルメットにある。長距離を飛ばすことが無いから、ハーフタイプがあそこまで普及しているのかな、と。あるいは、単純にフルフェイスは高いから敬遠されているのだろうか・・・などと思案に暮れていたら、通訳のメジロさんがまたしてもズバリな答えをくれた。「フルフェイスでは暑くて被っていられませんよ」。その場では、そうか、それはそうだと思ったのだが、日本に戻って同じくやたら暑いインドやインドネシアの街の写真を見ると、少なからぬ数のフルフェイスヘルメットが見つかるではないか。この辺りは、実用上(安全上)の問題なのか、見た目の問題なのか。今度、熱帯の国でフルフェイスのバイク乗りを見つけたら聞いてみよう。
話がそれたが、ベトナムではハーフタイプ限定でありながらも、色が多彩で、模様をペイント(シール貼り?)したり、意外とバラエティに富んでいる。白塗りのシンプルな(日本ではあまり見かけなくなったような)ヘルメットも沢山見かけるが、ベースボールキャップを模した形状、マットな塗装/表面加工、布地の貼り付けなど、日本ではあまり見かけないようなタイプのものも多かった。
触ったら柔らかそうに見えるヘルメットも・・・
ナイキのベースボールキャップ風ヘルメット。最初は自作かと思ったが同じものを何度も見かけたので量産品のようだ。正規品?
3. マスク
これは第一には排気ガス対策だと思うが、個人的には日焼け対策も兼ねていると思う。マスクの面積が大きく、女性の装着率の方が高かった。いわゆる医療用?のマスクも見かけたが、柄モノ・キャラクターモノが多かった。ファッションの一部となっているようだ。
女性はマスク率高し。色・柄は様々。
韓国のキャラクター、Puccaのマスク。
4. 美白
ここベトナムでも美白志向は強いようである。スクーターに乗る女性の大半が日焼け対策をしていた。具体的には、
・ 長袖(腕が日焼けないように。)
・ フードを被る(首筋が日焼けしないように。)
・ 面積の広いマスク(顔が日焼けしないように。首までカバーするマスクもある)
・ 手袋(手を日焼けしないように。)
・ 長ズボン・長スカート(パンツ着用率高し。特にスリムジーンズ。)
・ サングラス(兼シールド代わり?)
といったところであるが、これら全てをキッチリやっている人は意外と少数で、どこかお留守になっている人が多かったのが可笑しい。
メジロさんは、フルフェイスヘルメットは暑くて被っていられないと言っていたが、高温多湿のベトナムでこういった格好をするのもさぞかし暑かろうと思う。美白願望が暑さを凌ぐのだろうか。
こんな感じで顔まですっぽり覆われている人は多い。
手前の女性は完全防備。奥の女性は少数派。
5. 雨ニモ負ケズ
筆者がベトナムを訪問した9月は雨期にあたり、実際よく雨が降っていた。ホーチミンの雨期は、スコール的な雨ではなく、長い時間、しとしと降り続ける。しかしながら、傘をささない人をよく見かける。いちいち傘をさしてはおれぬ、ということのようで、メジロさん曰く「傘をさしている人を見ると、地元民じゃないなって思ってしまいます」。
とはいえ、結構な雨量である。さすがに雨の日はバイクの量が減るのだろうと思いきや、全然そんなことはなく、ホーチミンの皆さんは、常備しているのであろう、ハンドルまですっぽり覆ってしまえる雨合羽を被って走っていた。
スクーターに適した形状の雨合羽。
雨あがりの街角にて。雨合羽を吊るして干していた。
現地では閃かなかったが、スクーターに人気が集まる一因は、足まで容易に防水できることにもあるのではなかろうか。その国・地域に適したデザインを考えるときは気候風土も大事だなと思った次第である。
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