トリニティ株式会社

成り行きでできた(?)中国の「アウトドアリビング」

公開:2011年11月25日 更新:2011年11月25日

デザインリサーチで出掛けたシンセンは、高層ビルの建設ラッシュだった。
香港に隣接する街であり、大手企業も拠点に据えることから
急速にその姿を変えている。

 

そんな発展目覚ましいシンセンにもまだ昔ながらの「生活感溢れる」集合住宅が
ところどころに見られた。

鳥かごのようなベランダ、それを支えるか細いサポート部材、
お~、これぞ思い描いていた中国の光景! と感慨深く眺め、
ふと視線を下ろすとそこには

 

「アウトドアリビング」が…!?

この集合住宅の共有部に元々あったベンチをテーブルにして、
両脇にどこから持ってきたのか、立派なソファが置いてある。

 

ここで将棋をさす?
それにはテーブル(ベンチ)が長すぎる…
それにしても、なかなか座り心地の良さそうなソファだ。

 

成り行きでできたコミュニティプレイス。
「コミュニティ形成の場の原型」を見た!…って感じ?

 

そもそも、コミュニティの場なんて、あらかじめ用意するものではなく、
こうして自然とできあがるものなのかもしれない。

 

そう言えば、日本にも似た光景がある。
ベンチのないバス停に置かれたダイニングチェア。
待つのがしんどいお年寄りのために誰かが親切で置いたものだが、
椅子が置かれることで何もなかったその場所が
憩いの場に変わる点は一緒。

都市開発が進み、シンセンからもこうしたほのぼのとした光景は
消え去ってしまうのだろうか…?

 

いや、もし、この光景に見られる屋外でのコミュニケーションを
大事にする生活習慣が中国人全般に言えることだとしたら、
姿かたちは変わっても生き続けていくのかもしれない。

 

最近では、欧州の著名建築家による屋外にまでリビングが延びたような造りの
高層リゾートホテルが開発されたり、
コルビュジェの名作ソファLC3がアウトドア仕様になって
生まれ変わるなど、
「屋外での憩い」を奨励するデザインが続々誕生している。
日本では、縁側を設けた住宅を販売する住宅メーカーもある。

 

もしかしたら欧米や日本のこうした動きと、
中国のこの原初風景にある屋外社交のニーズって、
根本的には同じなのかもしれない。

 

今後、意外なところでクロスしていく?
どんな形でクロスするかはまだわからないけれど…

 

そんなことをふと考えさせた中国版アウトドアリビングの原型であった。

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文責

篠崎美絵
トリニティ株式会社 執行役員 / デザインコンサルタント・クリエイティブ・ディレクター

インテリアデザイン事務所でファッションブランドのブティックをはじめとする
商業空間の内装設計に従事。
ミラノ工科大学にてデザイン戦略のマスターコースを取得後、2003年にトリニティに入社。
デザイン、カルチャー、ライフスタイルの観点から消費者価値観や市場の潜在ニーズを洞察し、
具体的な商品/デザイン開発のアイデア創出のためのコンセプトシナリオ策定、及び
トレンド分析を行うデザインコンサルティング業務を担当。